囲い込みは時代遅れ「2009 逆風に立ち向かう企業」買う市(1/2 ページ)

インターネットショッピングのモールビジネスは、利用者とテナントの「囲い込み」ではなく「オープン化」が求められている――とlivedoorデパートなどを運営する買う市の平松庚三取締役は話す。同社が取り組む「オープン化」の戦略を聞いた。

» 2009年01月16日 08時00分 公開
[聞き手:杉浦知子,ITmedia]

 ECの分野は不況だから伸びる可能性があるが、追い風ではない――「livedoor デパート」などのインターネットショッピングサイトを運営する買う市の平松庚三取締役は話す。従来のような消費者の囲い込みではない新しい施策を打ち、サイトの利用者と出店するテナントの双方にとっての利便性を追求するという買う市の2009年の取り組みについて聞いた。

買う市 取締役 平松庚三氏

ITmedia 不景気といわれます。買う市にとっての最近の経済状況をどうとらえていますか。

平松 2008年の暮れから国内の景気が急激に悪化しましたが、ECは煽りを受けることが少なく「不況だから伸びる」という可能性があります。こうした不況下では消費者は、数ある商品の中から一番安いものを探す傾向があります。その場合、ネットの方が商品の比較検討がしやすく、安いものを探しやすいんです。

 不況は、ECを伸ばすチャンスといえます。ただし、同時に自分の会社の内部を開拓したり、足元を固めたり、ビジネスモデルを見直したり、自社のインフラを強化しなければならない時期でもあります。人材の質や規模、ECには欠かせない配送などの一連の作業を最適化するロジスティクスを強化する必要もあります。

 「より早く、より安く、より正確に」を念頭に、ロジスティクスを整備して、対テナント、対顧客へのサービスの質を上げることをわれわれは目指しています。他の業界と比べると、EC業界のコストの中でロジスティクスが占める割合は非常に大きいですから、ロジスティクスの整備がほかのECサイトとの差別化を図る付加価値になると思います。これは「買う市らしさ」を追求する取り組みです。

 livedoorデパートは、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」と比べると規模は小さいです。規模だけでなく、出店したテナントさんにとってどれだけ便利な仕組みを提供できるか、利用者が便利に商品を買えるかということが、差別化のポイントです。規模は小さくても、親切で小回りが利くネットモールにしたいです。

ITmedia 2008年11月にYahoo!ショッピングと業務提携しました。従来からネットショッピングのビジネスモデルとして主流だった「囲い込み」の戦略とは違った取り組みではないですか。

平松 確かに、過去のECのモールビジネスは囲い込みが主流でした。利用者に同じECサイトに囲い込み、継続的に買い物をさせるポイント制度や、テナントは所属するECサイトから自社のサイトに利用者を誘導してはいけないという施策です。しかし今後、自社サイトを運営しながら「支店」という位置づけでECサイトに出店するテナントが増えてくると、テナントの囲い込みは通用しなくなります。これからは囲い込みではなく、オープンなECが求められていくでしょう。

 買う市ではテナントへの支援として、ほかのサイトからlivedoorデパートへの引越し、サイト構築、商品の動画撮影などのサポートを提供しています。アフィリエイトの仕組みを導入することで、ECサイトの「支店」から自社サイトの「本店」への誘導を許可する方向を模索中です。消費者が本店で買い物をしたとしても、アフィリエイによって数%の手数料を受け取れるのです。テナントの囲い込みをしないことで、テナントにとっては本店、支店の両方を持つ意味、相乗効果が生まれるわけです。

ITmedia オープン化が進むと、ロジスティクスの部分のオープン化、つまり共同配送や共同倉庫なども活用できるようになるのでしょうか。

平松 ロジスティクスをオープンにすることで、在庫管理から流通まで買う市のロジスティクスが使われることになります。livedoorデパートで売れたものだけでなく、自社サイトで売れたもの、Yahoo!ショッピングで売れたもの、すべて買う市のロジスティクスで一元管理できるわけです。

 テナントさんの中には、ネット専業よりもリアルな店舗と兼業しているところが多いため、ネット上の本店、支店、リアルな店舗と、複数の店舗を持つことになります。買う市のテナント支援サービスでは、すべての店舗のオペレーションを効率化する手助けをしたいと考えています。今までECサイトを持たなかったテナントさんの参入障壁もほとんどなくせます。

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