銀行、証券の垣根を超えITポートフォリオを見直す「2009 逆風に立ち向かう企業」:みずほフィナンシャルグループ(1/2 ページ)

みずほ銀行の大規模なシステム統合を過去に経験してきたみずほフィナンシャルグループ。「2009年は厳しいだろうが、乗り切る準備はできている」と話す本山博史常務取締役に、2008年に始まった情報システム関連部門の取り組みを聞いた。

» 2009年01月19日 08時45分 公開
[聞き手:怒賀新也,杉浦知子,ITmedia]

 旧日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行を2002年に統合・再編し、みずほフィナンシャルグループが誕生した。2004年にはみずほ銀行として勘定系システムを旧第一勧業銀行のものに一本化した。苦労の末にシステムの統合と安定稼働を実現したみずほフィナンシャルグループのIT・システム・事務グループ長の本山博史常務取締役に、金融危機の影響や2008年に始まった「ITポートフォリオの再構築」など、情報システムへの取り組みについて聞いた。

みずほフィナンシャルグループ本山博史常務取締役 みずほフィナンシャルグループ 常務取締役企画グループ長 兼 IT・システム・事務グループ長 本山博史氏

ITmedia 2008年後半の米国発の金融危機で、経済全体が落ち込みました。

本山 金融危機の実体経済への波及は大きいです。金融分野の国の経済成長率への影響は、1997年から2006年の10年間で米国は0.8%、英国は1.4%。これに対し、日本は0.1%でした。米英には特に影響が大きいといえます。グローバルマネーは、不動産、新興国、穀物などの商品、石油などの資源、M&A、ソブリンウェルスファンドなどさまざまな分野で逆回転を始めており、簡単には戻りません。米国民は、住宅を担保に借金をして消費するという生活スタイルでしたが、それが崩れました。米国の個人消費は年間10兆ドル、一方で日本は3兆ドル、中国とインドを合わせても2.5兆ドルといわれています。米国経済の鈍化がいかに世界経済に影響を与えるか、この数字を見ても明らかです。

 カギは、米国の住宅価格がどこで下げ止まるかにあるでしょう。待つだけでは厳しい。オバマ新大統領が、1929年の世界恐慌を乗り切った「ニューディール政策」のように、需要を喚起する取り組みを実施すると言われています。例えば、古くなっている米国の交通インフラ刷新や環境ビジネスへの投資、教育、ITなどへの投資が挙げられています。

 一方で、日本は外需頼みから脱却する必要があります。これまでの輸出を中心とする経済活動だけでなく、内需・国を豊かにする政策をとっていく必要があります。今後は、電子政府の推進や教育、医療、農業などへの取り組みにより、国のインフラ力を引き上げなくてはならないと思います。

ITmedia これまでの情報システムへの取り組みを教えてください。2002年の大規模なシステム統合から2008年までをどのように評価していますか。

本山 みずほ銀行のシステムは、2002年4月1日、旧行のシステムをリレーコンピュータで統合しました。同日にシステム障害を起こしたことでご迷惑をおかけしましたが、その後の努力で現在は安定したシステムを運用できています。2004年にシステムを一本化しました。2002年から2004年中ごろまではシステムを安定化させるフェーズ、2004年から2007年までは、システムをユーザーニーズに対応させ、IT基盤を整備する局面だったととらえています。

 2008年からは、中期的なIT戦略やビジネス戦略を再構築してきています。ビジネスモデルとしては、みずほフィナンシャルグループには、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券があり、銀行や信託、証券業務があります。グループでしっかり連携することで、お客さまにこれらのサービスをシームレスに提供する考えを持っています。一方でIT戦略としては、そのビジネスモデルを支えるべく、グループとしてのITポートフォリオをもう一度見直そうというものです。

 従来、グループ各社がEA(エンタープライズアーキテクチャ)やSOA(サービス指向アーキテクチャ)といった取り組みを個別に実施し、それぞれが最適化を図ってきました。2008年からはグループとしての全体最適を追求し、ポートフォリオをもう一度見直す必要がありました。

 ポートフォリオとは、IT資産やIT人材を指します。ポートフォリオを見直すために、現状を可視化し、それを踏まえてあるべき姿を描くのです。例えば、センターやネットワークといったインフラを共通化、標準化していった方がいいと思っています。証券と銀行には業務の違いがたくさんあるので様子を見ながらではあります。こういった共通化には、コストの削減と、リソースの集中投資領域をグループ全体で明確にする狙いがあります。

 当社のIT部門には、2002年の統合前から長い期間勤めている人が多く、年齢も高くなってきています。そこで、新しく、若い人材を計画的にIT部門に投入していく計画として、2008年度に「MITプログラム」(みずほITトレーニングプログラム)をスタートさせました。

 銀行などの営業店での勤務を経験した社員を、半年間の集合研修プログラムに参加させた後、現場で研修します。組織としてのIT能力を高めることが目的ですので、業務要件の定義力、プロジェクトマネジメント力、システムの設計力、の3つをバランス良く身に付けるプログラムです。決して「ものづくり」だけのITのスキルを身につけさせるプログラムではありません。

 集合研修プログラムを終えた社員の配属先の選定も重要です。ユーザーとかかわるセクションに、先ほど述べた3つのITのスキルを持つ人を配属させることが必要なのです。また、ITシステム統括部にも、若い人材を入れる必要があります。既存の社員がこのプログラムの参加者にインスパイアされ、活性化することを期待しています。組織全体の能力を高めていきたいですね。

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