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仮想化時代のPCサーバ選択ポイントとはアナリストの視点(3/3 ページ)

» 2009年02月05日 15時18分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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忘れがちなNICポート数

 コア数とメモリに加えて、意外と盲点になりがちなのがNICポート数だ。多くの仮想サーバを稼働できたとしても、ネットワークがボトルネックになってレスポンスタイムが低下しては意味がない。また、仮想化環境においては仮想イメージバックアップ用の回線や障害発生時のマイグレーション用の回線などで必要となるNIC数が多くなりやすい。そのため、最低でも4ポート、さらにメザニンスロットなどの拡張で6〜8ポートまで追加できる余地を残しておくのが無難である。最近ではNICポートを仮想化する技術も登場しているので、それらの活用も検討するといいだろう。

サーバ形状はストレージと絡めて考える

 スペックに関する重要ポイントを把握したところで、次に検討すべきなのはサーバの形状である。物理的な充填率を考えると、ラック型とブレードのいずれかに絞られるだろう。そのうちのどちらを選択すべきかはストレージの扱いと密接に関係してくる。仮想化技術を用いてサーバを統合する以上、各物理サーバにストレージがDAS接続された状態を維持することは現実的ではない。したがって、必然的にストレージ統合が伴うことになる。

 独立系のシステムインテグレーターや販社の多くは特定ベンダーに依存することを嫌気する傾向が強い。そのため、ベンダロックインの可能性のあるブレードは避けられてきた。確かに管理すべきサーバのベンダが多種多様であるといった場合は、異種ベンダが混在しやすいラック型が適している場合も多い。しかし自社でサーバの管理運用を行うとなれば、多少ベンダー固有の構成になったとしても運用コスト削減を優先せざるを得ない状況も出てくるだろう。

 実際、SANベースのストレージをまだ構築しておらず、全ユーザーのサーバ台数を合計しても数十台程度に収まるといった場合にはブレードが有力な選択肢となってくる。従来、エンクロージャ(シャーシ)に組み込みのストレージブレードでは大容量のストレージ統合を伴う際には扱いづらい面もあった。しかし、最近ではエンクロージャ外部にラッキングしたSASストレージを共有ストレージとして活用できる製品も登場してきている。

 転送速度も3GbpsとFC-SANの4Gbps、IP-SAN(iSCSI)の1Gbpsと比較しても十分実用に耐えうる性能を持っている。さらにFC-SANやIP-SANのストレージと接続し、あたかもストレージブレードのように扱えるゲートウェイも登場してきている。従来はラック型の方が扱いやすいとされてきたストレージ統合を伴ったサーバ統合だが、このようにブレードも現実的な選択肢となりつつあるのである。

ブレードは運用管理面でのラック型との親和性をチェック

 そこでポイントとなるのは運用管理面での使い勝手だ。全てのサーバを一気にブレードに入れ替えることは考えにくく、当面はラック型とブレードが混在する状況になる。そこで、ブレードに付属の運用管理ツールがラック型やタワー型のものと大きく異なっていると、その分運用管理の手間が増えてしまう。システムインテグレーターや販社としては自社が慣れ親しんだラック型サーバ管理方法と新たに導入するブレードの運用管理ツールとの親和性も留意すべき事項となってくる。

課題は業務アプリケーションのライセンス

 サーバの仮想化は日々進歩し、技術面の課題も次々と解消しつつある。今後、サーバ仮想化の事例が増えてくるにつれて課題となるのは業務アプリケーションのライセンスである。OSやミドルウェア製品の中には仮想化環境におけるライセンス体系を明示しているものもあるが、中堅・中小企業で利用される業務アプリケーションでは方針が明示されていないものが多い。課金が発生するのは仮想イメージを作成した時点か、それとも仮想サーバ上で稼働させた段階かといったことや、1台で稼働させていた業務アプリケーションをリソース最適化のために2台の物理サーバに分散した場合にライセンスは2倍となってしまうのかなど考慮すべき点はたくさんある。

 現在のライセンス体系の多くはハードウェアとソフトウェアが互いに固定されている状況を前提としている。仮想化技術はそれを分離するものであるため、ライセンス体系に関しては、今後新たなスタンダードが求められることになるだろう。

 このように中堅・中小市場を対象とするシステムインテグレーターや販社にとって、PCサーバは単なるコモディティではなく、ユーザーのサーバ管理委託ニーズを捉え、自社サービスの拡充を図るための重要なプラットフォームになりつつある。アプリケーション層の開発業務のみに固執せず、サーバ運用管理業務を新たな機会と捉えて、今の時点から積極的な情報収集と戦略立案を練ることが重要である。

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