あらゆるアプリケーションはクラウドに――米SalesforceのCMO変化を迫られるSIer

シリコンバレーでは「1年後のことは過大評価するが、10年後のことは過小評価する傾向がある」という。クラウドコンピューティングの今後について、Salesforce.comのケンダル・コリンズCMOに聞いた。

» 2009年03月05日 08時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 「長い目で見れば今メインフレームで動いているようなものも含めてあらゆるアプリケーションがクラウドに載る」

 米Salesforce.comの最高マーケティング責任者、ケンダル・コリンズ氏は話す。シリコンバレー周辺で技術の進歩についてよく言われるのが「1年後のことは過大評価するが、10年後のことは過小評価する傾向がある」といった経験則だという。クラウド化の加速はシステムインテグレーターなど既存のビジネスの形態を大きく変える可能性がある。

ケンダル・コリンズ氏。Oracleなどを経て5年前に入社した

 同氏は「Salesforce.comは設立してちょうど10年になる。10年前はアパートに3人いるだけだった」と説明する。「10年後に東京に来て大規模なイベントを開催するなど想像もしていない状況だった」という。10年の技術進歩を織り込めば、不可能な話ではないという考えだ。当面は、「パフォーマンスや可用性、信頼性といった技術面の進歩が必要」としている。実際に、米国では2月24日に、クラウドの代表的なサービスであるGoogleのGmailが、約2時間半にわたってアクセス不能になる障害があった。止められないシステムにSaaSを採用することへのリスクをいかに低減するかが、企業向けSaaS拡大の命題であることが改めて浮き彫りになった。

 加えて、クラウドコンピューティングの可能性を広げるためには、性能だけでなく、質の高いアプリケーションが多数出てくる必要もある。

 Salesforce.comはSFA(営業支援ツール)の提供で成長してきたが、現在は「Force.com」と呼ぶプラットフォームビジネスに軸足を移しつつある。これは、Salesforce自身はシステムの基盤を提供し、その上で稼働するアプリケーションをISV(独立系ソフトウェアベンダー)やシステムインテグレーター(SI)が構築するというモデルだ。

 コリンズ氏は企業会計システムを構築した英CODAや、製造業向けアプリケーションベンダーの米Glovia InternationalがForce.com向けにシステムを提供していることを強調。Force.comは日本で浸透しているとはいえないものの、「日本郵政やコンビニエンスストアのローソンが導入している」と事例を強調した。

 クラウドコンピューティングでは、以前のようにシステム構築に1、2年をかけるケースは少なくなってくる。そのため「システムインテグレーターなど、これまでのような人月ベースで仕事をするビジネスは相対的に収益性が低くなる」といった指摘も出てきている。あらゆるアプリケーションがクラウドになるかどうかは別だが、システムインテグレーターやシステム系のコンサルティング企業などは、クラウドアプリケーションの導入支援や自らもクラウド上でアプリケーションを提供するなど、新たな収益獲得策を考える必要がある。

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