中堅・中小企業向けERP市場、成長も09年以降は伸び鈍化安易に攻略できぬ中小(1/3 ページ)

SMB(中堅中小企業)向けERP市場は、2008年度まで順調に2桁の伸びを示してきた。だが、経済環境の悪化という逆風に加え、基幹業務システムの統合化がすべての企業にとって必要かどうか疑問視されるなど必ずしも楽観的な状況ではない。

» 2009年03月16日 09時50分 公開
[伊嶋謙二(ノークリサーチ),ITmedia]

 SMB(中堅中小企業)向けERP市場は、2008年度まで順調に2桁の伸びを示してきた。だが、経済環境の悪化という逆風に加え、基幹業務システムの統合化がすべての企業にとって必要かどうか疑問視されるなど必ずしも楽観的な状況ではない。そんな中で、J-SOXや内部統制対応が必ずしもERPを検討の追い風にならなかったという事実、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)の導入やフロント系アプリケーションとのシステム連携など、新たな動きが出てきており、今後のERP市場の行く末を左右しそうだ。

 2007年度のERPパッケージライセンス売上高は市場全体で、1064億円で前年度比106.6%と1000億円を突破した。だが、中堅・中小企業向けERPは778億円で前年度比104.9%と伸びにとどまった。しかし2008年度のERPパッケージライセンス売上高は市場全体で、1227億円で前年度比115.4%が見込まれる。再び拡大基調にあるように見えるが、2009年以降は伸び鈍化が確実な状況だ。

 要因は、経済環境の悪化に伴う負のスパイラルが実態市場に大きな影響を与えており、IT投資、とりわけ「基幹系システムリプレース」の大きな抑止力になってしまっているためだ。09年度全体では2%程度の伸びとみている。

 ともあれ08年度の中堅・中小企業向けERPは899億円で115.6%と、2桁成長する見通しだ。07年度中堅・中小企業の成長率が低かったのは、IT投資全般の見直しや買い控え、内需、景気の悪化、J-SOX、内部統制などコンプライアンスへの対応がERP導入に抑止力が働いたことが原因だった。08年度の前半は、07年度の投資抑制から一転、導入へと舵を切り直し、導入意向が高まっており、08年度後半はクロージングに向けた納めに入っている状況だ。そのため経過的には好調な実績を示すことになるだろう。

 07年度年商別ERPライセンス売上高を見ると、年商50億円未満(中小企業クラス)は212億円、年商50億円以上100億円未満(中堅Lクラス)が189億円、年商100億円以上300億円未満(中堅Mクラス)の213億円、年商300億円以上500億円未満(中堅Hクラス)162億円となっている。

 08年度の見込みでは、中小企業クラスは伸びが低い傾向が続く。中堅Lクラス、中堅Mクラスでは20%以上成長する見通しだ。ERP市場のSMBでの中心需要が中堅Lクラス、中堅Mクラスなっていくものと予想される。特に中堅Mクラスは07年度の213億円から08年度は270億円と、27%の高い伸びが見込まれる、クラス別でもSMB市場全体の899億円の約3割を中堅Mクラスで占めることになる。

 一方中小企業クラスでは「単体業務パッケージ」を選択ないしは現状システムを使い続ける傾向が見え始めている。機能的にも価格的にも選択しやすいということはもちろんだが、「ERPとして基幹業務を統合する必然性が低い」ために、「非ERP」選択の動きが見られる。一方で中堅Lクラス、中堅Mクラスでは、大企業向けにERPを提供していたベンダーの中堅市場に「ダウンアプローチ」と中小企業クラス向けベンダーの「アッパーアプローチ」の潮流がぶつかり、市場としてはまれにみる激戦区となってきている。

 中堅企業への導入が進み、中小企業への導入が停滞している原因・要因には、中小企業での「非ERP」での単体業務パッケージを選択する動きがみられる。一方中堅企業では、複数モジュールの導入、統合的な経営視点でのERP導入ニーズが高まっている。対応するベンダーも飽和間のある大企業市場から、主戦場を中堅企業にシフトしつつあることで、中堅企業市場が活性化している。競合がきつくなっているということだ。1つの案件に5社ぐらいがコンペになることなどはよくあることで、この狂乱の事態に生き残るベンダーは極めて厳しい対応を迫られている。

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