日本上陸の新勢力が狙うBIの潜在需要Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年03月16日 09時53分 公開
[松岡功ITmedia]
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オペレーショナルBI市場に照準

 こうしたハイパフォーマンスの一方で、使いやすさもQlikViewの大きな売り物のようだ。会見でもデモによってその一部を見ることができた。

 この点も少し解説しておくと、QlikViewでは、グラフや表、リスト、帳票上の見たいものをクリックするだけの操作で、目的の情報をさまざまな切り口から分析することができる。また、データの読み込みや統合、新たな図表を作成する場合にもプログラムを組む必要はなく、ウィザードに従って操作するだけで目的の情報を可視化できるという。

 「どんな分野でもデファクトスタンダードになっているツールの必須条件は使い勝手が良いこと。これは次世代のツールにも変わりはない。私には10代の息子がふたりいるが、彼らも使いづらい複雑なものに手をつけようとはしない」

 ビョークCEOはこう言って、「QlikViewは将来、BIのデファクトになるかもしれない」と自信を覗かせた。

 QlikTechは日本市場への本格参入にあたり、サイロジックと総販売代理店契約を結んで「QlikView Japan」として任命。アシスト、CSKシステムズ西日本、日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェアの3社とも再販契約を結んで、今後3年間で1000万ドル規模の売り上げを目指す構えだ。

 日本市場で成功を収めるシナリオを、ビョークCEOはどのように描いているのか。

 「日本のBI市場は2億ドル程度。だが、例えば人口900万人のスウェーデンが1億ドル規模であることを考えると、経済規模や人口からみて日本はまだまだ拡大の余地があり、数十億ドル規模の潜在需要があるはず。そのカギを握るのはまだ手つかずになっている領域だ。QlikViewは世界中でその領域に受け入れられてきた。日本でもその領域を狙いたい」

 そしてビョークCEOはその領域を「これまでBIに触れたことのないユーザー」と表現した。つまりはこういうことだ。

 従来のBIツールは経営者や管理者への情報デリバリーを目的としており、事前に設定した項目についてデータの抽出・集計を行い、定型的かつ静的な分析レポートを提示するにとどまっていた。しかし最近では、業務担当者がリアルタイム性の高いデータを非定型的に分析できる“オペレーショナルBI”への要望が高まってきている。QlikViewがターゲットとしているのは、まさにこの領域だ。

 とはいえ、競合他社もオペレーショナルBI市場に手をこまねいているわけではない。1年半ほど前に日本市場で戦略製品を投入したマイクロソフトの狙いもまさしくこの領域だ。さらに有力なBI専業ベンダーを買収してきたIBMやオラクル、SAPも、製品ラインアップの刷新とともに虎視眈々とこの領域への進出を狙っている。

会見後、単独インタビューに応じた米QlikTechのラース・ビョークCEO

 はたしてQlikViewの日本上陸がBI市場にどれほどの刺激を与えるか。これは、BIがビジネスの攻めの道具として活用するものだけに、ひいては企業の活力にもつながってくるだろう。その意味でもQlikViewには、市場に新風を吹き込んでもらいたいものだ。

 インタビューの最後に、ビョークCEOに「これまで有力なBI専業ベンダーが大手ITベンダーに買収されるケースが目立ったが、QlikTechが同じ道をたどることはないか」と尋ねてみた。するとこんな答えが返ってきた。

 「買収されることは考えていない。株式公開をすれば、より多くの資金調達もできる。戦略的な提携には応じることもあるだろうが、私たちはBIに特化して今後も前進したい」

 その心意気や良し。QlikViewが市場を刺激することを期待したい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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