わが社のコスト削減

外資ソフトが攻勢、「国策」定額給付金の支給管理にもわが社のコスト削減(1/3 ページ)

山梨県甲府市は3月、定額給付金支給管理システムにセールスフォース・ドットコムのサービスを採用した。SAPや新興BIの新たな動きが出てくるなど、ここにきて外資系ソフトウェアベンダーの攻勢が目立つ。

» 2009年04月06日 08時30分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

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 山梨県甲府市は3月、定額給付金支給管理システムにセールスフォース・ドットコムのサービスを導入したことを明らかにした。通常の構築方法に比べて半分程度のコストで済ませた。ここにきて、外資系ソフトウェアベンダーの攻勢が目立つ。よりどころは今や世界中の企業が口にする「コスト削減」だ。SAPジャパンは、要件が複雑でパッケージは無理といわれる製造業の生産実行システムへのパッケージ導入に6月に乗り出す。インメモリ型の高速ビジネスインテリジェンス(BI)を売りにする米QlikTechも、3月に日本市場への参入を表明した。一方で、国産ベンダーから強いメッセージは聞こえてこない。

Salesforceでコストは半分程度

甲府市役所の土屋光秋氏

 定額給付金支給管理システムにSalesforceを導入した甲府市。9万件の世帯主に向けて、給付金受け取りの申請書を印刷し、3月末に発送した。担当した甲府市役所企画部情報政策室 情報政策課の土屋光秋氏は「定額給付金管理システムは一過性のものであること、稼働までの期間が短いことという2つの特徴がある」と話す。個人情報を扱う関係でセキュリティにも気を使わなくてはならないため、VPN上でソフトウェアを利用するようにした。

 「定額給付金管理システムの導入費用は国から支給される。だからといってたくさん使っていいわけではない」(土屋氏)

 誰もが納得し、上司などに説明できる金額が知りたかったという同氏は、パッケージをはじめさまざまな製品を調べた。「納期は短いが機能が中途半端」など納得できるものになかなか出会えなかったところに、たまたまセールスフォースから提案があったという。

 サーバを自ら用意しなくていいこと、利用するサーバの台数に利用月数を掛け合わせた金額が費用というように、分かりやすかったことも導入の決め手になった。導入費用は「30代の公務員が無理なく買える自動車の値段くらい」(土屋氏)。ざっと100〜300万円程度か。この額について土屋氏は「国産を含め多くのベンダーに見積もりをしてもらった。感覚値だが別の方法でシステムを構築していたら2倍は掛かっていた」と話す。

 利用月数に関して、甲府市は定額給付金の申請期限を2009年9月30日までとしている。残務整理を含めて10月いっぱいまでシステムを利用する。その後、セールスフォース側でシステム内容の消去を確認し、契約を終えるという流れだ。

 ちなみに、定額給付金管理システムの構築で困ったことは、外字の問題だった。戸籍上の名前が標準文字以外で構成されている場合、データベース上で表現し切れなくなる。どうしても正規化できない場合は「特定のデータだけを抜き出して手書きで対応した」(土屋氏)。最終的に九十数パーセントは通常の入力ができたが、手書き処理も数パーセント残った。システムは万能ではなく「割り切りが必要」(土屋氏)としている。

 もう1つは、定額給付金の受給権利が確定する2月1日以降に死亡した人の扱いだった。「確かに資格はあるのだが亡くなった人に支給するのはやはりおかしい」(同氏)ため、週に1度などの頻度で市内の死亡者を確認し、住民基本台帳と照らし合わせることで、受給資格者を見直す考えだ。

 こうした一過性のシステムは、定額給付金の支給管理システムだけではなく、例えば企業のキャンペーンサイトなどにも当てはまる。SaaS(サービスとしてのソフトウェア)をはじめ従来型とは異なるシステムの提供形態が今後登場してきそうだ。

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