IE 8は、Google ChromeやFirefoxといった競合ブラウザに一部の機能で後れを取っているが、社内配備のためのカスタマイズの容易さという点では群を抜いている。「Internet Explorer 管理者キット 8」を使って実際にIE 8のカスタム版を作成してみた(17枚の画像による機能紹介付き)。
先日、Microsoft Internet Explorer 8(IE 8)をテストしたところ、従来バージョンと比べれば大幅な改善が施されているものの、一部の機能については、競合ブラウザ(Google Chrome、Mozilla Firefox、Apple Safari、Opera SoftwareのOpera)に後れを取っていることが分かった。
しかし、特に企業環境でのブラウザ利用という点では、ライバル製品に対してIE 8が大きなアドバンテージを持っている分野が1つある。「Internet Explorer 管理者キット 8(IEAK 8)」を使えば、IE 8を高度にカスタマイズしたバージョンを作成し、それをシームレスに社内に配備することができるのである。
ブラウザを業務用にカスタマイズしたバージョンを作成するという点に関しては、MicrosoftのIEAK 8は競合ブラウザのカスタマイズ機能をはるかにしのいでいる。Firefoxには「CCK Wizard」というアドオンがあり、これを使えばFirefoxブラウザのカスタム版を作成することができるが、IEAKと比べると非常に基本的な機能しかない。各種のソフトウェア管理プラットフォームを利用してブラウザをカスタマイズ、配備するという方法もあるが、これはコストが掛かる上に複雑さも増す。
IEAK 8は無償で利用できるが、その機能とライセンス形態は用途によって異なる。IEAKにはISP(インターネットサービスプロバイダー)、Webサイト、ソフトウェアプロバイダー、企業向けのバージョンが用意されており、可能なカスタマイズレベルはそれぞれ異なる。
このレビューでは、最も豊富なカスタマイズオプションを提供する「IEAK 8 Corporate Version」を使用した。
テストの結果、IEAK 8は非常に使いやすく、IE 8を社内配布用に高度にカスタマイズしたバージョンを素早く作成できることが分かった。
IEAKの使用に当たって最初にすべきことは、IEAKをインストールしたシステム上で動作しているバージョンのIE 8を、事前にある程度カスタマイズしておくことである。IEAKはそれがインストールされたシステム上で動作しているIEから一部の情報を取り込む(検索プロバイダー、アドオン、お気に入りなど)。このため最初のステップとして、そのシステム上のブラウザには、カスタムバージョンに含めたいアドオン、検索プロバイダー、お気に入りがすべてそろっているか確認することが大切だ。
次のステップは「Customization Wizard」を起動することである。このウィザードはIE 8のカスタム版を作成するプロセスの手順を段階的に示してくれる。
IEのカスタム版を作成する上でやや面倒だと感じられるのは、サポートする必要があるWindowsの各バージョンごとに同ウィザードを実行する必要があることだ。言い換えれば、Windows XP、Vista、Windows Server 2003のそれぞれに対してカスタム版を作成し、さらにx86とx64用の各Windowsバージョン用にそれぞれカスタム版を作成しなければならないこともあるということだ。しかし、これは、IEAKの問題というよりはIE自身の問題である。
ウィザードで最初に行う操作の1つは、IE 8のカスタム版が動作するプラットフォームを選択することである。IE 8のカスタム版の配備は、CD-ROM、ファイルのダウンロード(.exeおよび.msi形式)、あるいは構成ファイル(既にIE8がインストールされているシステムに適用)によって行える。
Customization Wizardの手順をすべて実行するのは少し時間がかかるため、最初の画面で、ブラウザでカスタマイズする部分を選択できるのは助かる。変更の必要がないブラウザ機能の選択を外すことによって、ウィザードの手順を大幅に短縮できる。
IEAK 8のもう1つの便利な機能が、「Automatic Version Synchronization」である。この機能を利用すれば、ネットワーク上のシステムにインストールされたIE 8が、常に最新のバージョンと最新のパッチ適用状態に維持される。
IEAKでは、従業員がIE 8をインストールする際のユーザーエクスペリエンスで幾つかのオプションが用意されている。
その1つは、通常版と同じようにインストールする方法で、画面には標準的なオプションが表示される。しかし設定不要のインストール(ユーザーはオプションを選択できない)や、完全自動インストールを選択することも可能だ。
基本的なブランド設定オプションも用意されているが、ブラウザのルック&フィールを大幅に変更する機能はない。テストでは、IE 8の一番上のタイトルバーの表示を「Windows Internet Explorer Provided by eWEEK Labs」と変更することができた。
IEAK 8は、ブラウザ内の統合検索機能をカスタマイズするIE 8の機能をうまく利用している。どの検索プロバイダーを利用するかを指定できるほか、自社のWebサイトや社内の検索サーバをブラウザに追加することも可能だ。
ブラウザ内で使用するすべての標準リンクとホームページは、IEAKであらかじめ設定できる。テストでは、ホームページ、お気に入りの内容、ブラウザのリンクバーに表示されるリンクを事前に設定できた。基本的に、これらの設定は、IEAKが動作しているシステムにインストールされているブラウザから抽出される(IEAK内でそれらをカスタマイズすることも可能)。ユーザーがインストールを完了した後でも、ユーザーに表示されるページの構成を変更することができる。
アクセラレータ(ブラウザウィンドウ内で追加的インライン機能を提供する)やWebスライスといったIE 8の新機能も、IEAKで事前に設定できる。テストでは、アクセラレータをIEAKにインポート、追加することにより、カスタマイズしたIE 8パッケージをユーザーがインストールしたときにそれらが表示されるようにした。
もう1つ興味深かったのは、デフォルトでIE 7互換モードで動作するようにIE 8を設定できたことだ。これは、IE 7との互換性が必要なWebアプリケーションを利用している企業にとって魅力的な機能だと思われる。
IEAK 8 Corporate Versionでは、セキュリティ設定をコントロールおよびロックすることにより、IE 8のセキュリティゾーンとコンテンツレーティングを事前に定義できる。プロキシサーバなどのレガシーセキュリティ設定もIEAKでコントロールできる。
ウィザードの最後に現れるのが「Additional Settings」画面だ。その素っ気ない名称とは裏腹に、これは最も強力な機能といえるかもしれない。この画面では、オートコンプリート機能やキャッシュコントロール、言語設定など、IE 8のほぼすべての機能を設定できるのだ。
ウィザードが終了すると、IEAKはIE 8のインストールファイルを.exeおよび.msi形式で生成する。CDインストールを選択した場合には、自動実行モードに設定されたCDイメージが生成される。
IEAK 8には「Profile Manager」というツールも含まれている。このツールでは、IE 8を配備した後で、設定済みの構成をオープンして必要な変更を加えることができる。
IEAK 8はMicrosoftのサイトからダウンロードできる。
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