コンピュータ業界に新たな秩序――Oracle Buys Sun伴大作の木漏れ日(3/4 ページ)

» 2009年04月21日 18時56分 公開
[伴大作,ITmedia]

メリット、デメリット、ライバル各社の反応

 OracleにとってSunを買収するメリットは既に記したが、一方でデメリットも存在する。最大の問題はベンダーUNIXでSunと覇権を競ってきたHPの対応だ。Oracleの成長はHPのオープンシステムのビジネス成長と期を一にしてきた。これはSunが当初はSybaseを主に用いてきたことと関係している。Sunはユーザーニーズにより、ある意味で仕方なしにOracleを採用したといえるからだ。

 HPは、OracleがSunと一つになった暁に、Oracleがハードビジネスを放棄でもしない限り、DB製品に関し、当然、別のオプションを探る可能性が高まる。その場合、MicrosoftのSQL Serverに重点を移す可能性が高い。もちろん、世界的な事実上の提携関係を明日破棄するような事はないだろうが、少なくとも少し距離を置く可能性は高まる。

 サーバ製品でシェア2位のDellとの関係に変わりはないと思う。むしろ、OracleはHPへのけん制もあり、Dellとの関係を重視するようになるかもしれない。シンクライアントでSunは常に技術開発の先頭にいたが、自社のアーキテクチャにこだわるあまり、ビジネスチャンスを失ってきた。この分野で、HPは高いシェアを確保しているが、Oracleはソフトウェアライセンス化して、Sun Rayのノウハウを一般に公開するかもしれない。そうなれば、市場の大きな恩恵を受けるのは多分Dellになるだろう。

 IBMが自社のDB2の比重を高めるのは間違いない。もちろん、顧客から要求があった場合、Oracle製品を搭載するのに異論を挟むようなことはないだろうが、自ら進んでOracle製品を勧めることはなくなるだろう。

 ただし、これまでSunと進めてきたオープンスタンダードに関わるさまざまな取り決めに大きな変更があるとは考えられない。今後も、オープン化の流れをとどめる必要性をIBMが感じているとは思えないからだ。それより、永年の仇敵であるMicrosoftが両者の敵であることは変わりがない。むしろ、Sun、Oracle、IBMの三社体制であった時代より、スムーズに方針が決定されるようになるだろう。

 Microsoftはしばらく静観するに違いない。上記したように、Sunとはオフィススイート、Windows OSの件で常に独禁法適用に積極的に動いたSunが消え去ること自体、Microsoftにとって歓迎すべきことだ。だが、Sunを買収したのが、少し競合分野が違うとはいえ同じソフトウェアベンダーであるOracleだという事実に内心穏やかではないだろう。

 特に、コンシューマー向け製品やOS分野でもマイクロソフトの独占状態、価格の高さに常に注目が集まる現状を考えると今後Oracleが支配しているコーポレート分野に軸足を移そうとしているのは誰でも知っている事実だ。しばらくは静観し、Oracleを採用しているベンダーの足並みが乱れるのを注視するだろう。

 日本の富士通は世界のベンダーの中で、今回の合併の影響を最も受けるベンダーだ。SPARCチップを生産しているのも、SPARCを搭載したサーバをOEM生産し、自らのブランドで販売しているのも、今や富士通だけだ。しかも、そのウエートは日本国内の売上高、海外向け出荷いずれもかなり大きい。

 野副州旦社長になり、x86アーキテクチャ開発をFTS(旧富士通Siemens)へ全面移管、マイクロソフトとの関係強化を図るように模索している最中だが、x86サーバビジネスには強力なライバルも多く、成功の道筋は見えていない。その最中で、今回の発表は少なからず影響があると見ざるを得ない。

 あるいは、Oracleがほかのハードウェアベンダーとの関係を重視し、ハードウェアビジネスを富士通に売却する可能性もある。その場合、富士通はこれまで最大の懸案であった米国への進出の足がかりを手に入れることができるのだが、WintelとSun、Solaris、SPARCのビジネスとどのような比重を置くのかが注目される。

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