モバイルコンピューティング推進コンソーシアムは、スマートフォン市場の中期予測調査を行っている。飽和する携帯電話市場を活性化させる上で、企業の利用拡大が重要な切り口になると指摘する。
モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)は、3月16日に「スマートフォン市場の中期予測」と題した調査結果を公開した。同リポートはスマートフォン利用の現状や意向について、個人と法人にインターネットでアンケートを行い、それぞれ1000件の有効回答をまとめた。
スマートフォンの定義について、MCPCは「仕様が公開された汎用的なOSを搭載し、利用者が自由にアプリケーションを追加して機能拡張やカスタマイズができる携帯電話およびPHS」としている。具体的には、Symbian、Windows Mobile、iPhone OS、Android、BlackBerryの各OSを搭載する端末を指している。
リポートの狙いについて、MCPCスマートフォン普及委員長を務める白石美成氏(ソフトバンクモバイル法人マーケティング統括部)は、「高機能端末として世界的に注目されているスマートフォンが国内で普及するための手がかりを得るため」と説明している。
スマートフォン利用に関する国内と海外の違いについて、リポートでは国内が情報処理端末としての利用が中心であるのに対し、海外ではメールなどのコミュニケーション用途が中心であることが分かった。さらに国内では、個人ではインターネット閲覧が主な用途になるが、企業や法人では業務データの処理が中心だった。
これらの結果から、白石氏は「企業を中心にスマートフォンはノートPCと同じような高度な使い方がされており、日本ならではの立場を築きつつある。海外での使い方は国内の一般的な端末ですでに実現しており、日本のスマートフォンは“スマートフォン 2.0”と言える存在だ」と話している。
白石氏はまた、スマートフォンがSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型アプリケーションやクラウドコンピューティングの普及の起爆材になるという独自の見解も示す。「屋外でビジネスデータを効率的に扱えるスマートフォンは、新たなコンピューティング環境に適したデバイス。スマートフォンに適した開発環境もすでに整いつつある」(同氏)
具体的には、国内の携帯電話4社とウィルコムが展開するMicrosoftのWindows Mobile OS搭載の端末が多数出荷されており、Visual Studio 2008などを利用してWindows PCとスマートフォン向けの業務アプリケーションを一体的に開発できる。また、アクシスソフトやモビーダ・ソリューションズなどがスマートフォン向けのリッチクライアントの開発環境を提供しており、端末内にデータを蓄積しないといったセキュリティを意識した開発も可能な点を挙げている。
このほかにも、スマートフォンはノートPCに比べて端末価格が安く、特定のアプリケーション用途であればコスト削減が図れること、アプリケーション自由度が高いことも普及の追い風になるという。一方、普及の障壁になるのは知名度や導入効果を数値的に得にくい(業務効率改善などの点で)、通信料金などがあるとリポートでは指摘している。
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