売上規模拡大へIT事業でM&A間近かニュース解説 NECの業績予想

NECが2009年度連結業績予想において、売上高4兆円を割り込む見通しを明らかにした。グローバル企業としての売上高の規模感を、同社の矢野薫社長はどう考えているのか。

» 2009年05月13日 13時37分 公開
[松岡功,ITmedia]

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 NECが5月12日に発表した2009年度連結業績予想で、売上高3兆7300億円と、4兆円を割り込む見通しを明らかにした(ニュース記事参照)。

 05年度には5兆円目前まで到達したが、その後の国内景気停滞もあって、08年度には4兆2156億円となり、昨今の世界的な経済不況を受けて09年度はさらに厳しくなるとの見方を示した格好だ。

 ただし、決算会見に臨んだ矢野薫社長によると、09年度は「営業利益1000億円、当期利益黒字化をめざす」(矢野社長)ことを最大のテーマとし、「売上高についても営業担当には4兆円を超えようとハッパをかけている」という。

 とはいえ、09年度は半導体事業が連結から外れ、売上高としては3兆円台前半にとどまることも想定される。

 会見ではそうした状況も踏まえて、矢野社長に対してグローバル企業としての売上高の規模感を問う一幕もあった。

 「売上高が大きければいいとは必ずしも思わないが、3兆円台というのは、世界の競合メーカーと伍して世界市場で戦っていく企業の規模としては小さいと認識している。規模感として意識しているのは、やはり5兆円。現状を踏まえると今すぐに到達できる数字ではないが、改めて目指すべき目標だと考えている」

 矢野社長はこう語り、さらに「世界市場で戦っていくために、あらゆる方策を模索している。今ここでお話しできることはないが、期待していただいていい」と力を込めた。

 キーワードは「世界市場」か。ちなみにNECの海外売上比率は20%台半ばで、競合する海外メーカーはもちろん、国内メーカーに比べても低い。この点について問われた矢野社長はこう答えた。

 「海外売上比率が競合に比べて低いことは認識している。まずは30%台にすることが当面の課題だ。基本的な考え方としては、C&CというNECの強みを生かしながら、海外でも新たな市場を創造していきたい。ネットワーク事業はすでに海外で広く展開しているので、今後の焦点となるのはIT事業。M&Aも含めて積極的に動いていきたい」

 売上高5兆円をめざして海外事業拡大に注力し、IT事業領域でM&Aも視野に――。矢野社長が「期待していただいていい」という内容の方程式は、ここまでは紐解けそうだ。さて、どんな手を打って出るか。注目したい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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