自治体の予算策定でも、当然、費用対効果を明確に示すことが求められる。しかし「ちょっとどうなの?」と言いたくなることも…。
ちょうど読者の皆さんがこの記事を読むころ、自治体では議会が行われている。議会の目玉は国の補正を受けた景気対策だ。国が15兆円を超える補正をしたので、このときとばかりにさまざまな施策を打つことになり、各自治体は予算策定に追われた。
自治体において予算策定を行うのは財政課だが、ここに所属する者の基本的思考は「平準」と「減額」であり、新規予算や増額を求められると激しく拒否する傾向にある。以前であれば増額査定をしたなどという話もあったが、小泉政権の三位一体の改革以降、自治体は財源難に陥ったため、「査定=減額」もしくは「ゼロ査定」が当たり前のようになっていて、減額ができない財政課職員は無能であるかのような雰囲気だ。
断っておくが、財政課職員が悪いわけではない。現在の財政状況では、やらねばならない事業であったとしても割ける予算は限られてしまう。財政破綻しないための苦渋の査定なのだ。
当然、電子自治体化のような至上命令も、財政課という関所を通過しなければならないのだが、ここ数年、説明に非常に困る事態となっている。
例えば、文書の電子化、ネットワーク化、セキュリティの高度化は進めなければいけない事項だが、「費用対効果を提示せよ」といわれれてもなかなか出せるものではない。文書の電子化だけをみても、議会の電子化、決裁の電子化、申請等庶務事務の電子化、出力帳票の電子化など多岐にわたるため10年かけても終わるか分からない。さらに、申請等庶務事務をとってみても、休暇、手当、出張、残業など広範囲だ。
説明が難しいので、外部委託により費用対効果測定を実施する自治体もあるが、結果として出てくる「○○人削減可能」などという数値に困惑したりする。どう考えても削減ができないからだ。個々の職員からみれば、例えば数時間かかった作業が数分で終わるので「便利&楽チン!!」なのだが、(総削減時間÷1日の労働時間)×0.6=削減人数と言えないのは誰の目から見ても明らかだし、0.6って何だ、根拠はあるのかとなるからだ。
民間であれば、「人員の削減効果はただちに出てくるものではない」と常識が働くし、「職員の業務時間のより多くを収益業務に充てるべきだ」と整理されるので、ある程度許容されるのだが、昨今の行政ではそうもいかなくなった。ここ数年、次のようなことが求められる。
上記は、税金を払う住民からみれば当然のことであり、正しいことである。しかし厳格な約束とされると、「ちょっとどうなの?」と思ってしまう。努力し、可能な限り守るべき約束なら理解できるのだが、厳格な約束ではきつ過ぎるからだ。
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