企業システムはエンタープライズクラウドの構築へ向かう――日本IBM諸富氏“Smarter”な世界を目指し(2/2 ページ)

» 2009年06月05日 08時00分 公開
[聞き手:石森将文,ITmedia]
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企業システムはエンタープライズクラウドへ

――スマートな世界をもたらすための、System xのチャレンジは。

諸富 ユーザーにとって、爆発的に増えたデータの処理量を見積るのは、難しいことです。例えばビデオサーベイランス(映像分析・認識技術)ソリューションについて考えてみましょう。従来、同時に認識する対象の最大値を設定する必要がありますが、最大「100人の人間」まで認識させるならば、分析サーバのサイジングもマックス値を前提に行う必要がありました。当然、常に100人を分析するわけではありませんから、サーバリソースの平均利用率は下がってしまい、いわゆるムダが生じてしまいます。

 これを解決する技術として、「仮想化」があります。しかしIBMは、今になって仮想化についてメッセージを出し始めたわけではありません。そこには仮想化技術に対し40年以上にわたる、メインフレーマーとしてのノウハウ・経験があり、「ようやくIAの世界における仮想化技術が、われわれに追いついてきた。ウェルカムだ」というのが率直な印象です。

 仮想化も、単純な導入の仕方では、「ITリソースの最大利用値と最低利用値を、やや真ん中に寄せただけ」になってしまいます。そこから一歩進んで、より大規模なリソースプールから必要なリソースだけをオンデマンドで引き出すという考え方こそが、クラウドです。

 ユーザー企業自身がデータセンターを持つ場合、電源、床の耐荷重、冷却設備など、ビルのファシリティに依存する問題が多く発生します。こういったハードルを最小化するには、より高集積で、より低消費電力で、そして高いパフォーマンスを発揮するサーバが必要です。

 われわれは、パフォーマンスについてはNehalem-EP搭載サーバ群の投入で市場に応えました。サーバのパワーサプライについては、従来から80 Plus認証を受けたAC/DC変換効率90%以上をうたうユニットを提供しており、また例えばSystem x3650 M2においては、従来製品より、冷却ファンの消費電力を最大63%低減しました。

 その冷却用ファンについてもエンクロージャに2台と、必要十分にして最小限な数で対応しています。「ファンは多いほどいいのでは?」と考える向きもあるようですが、それには同意しません。そもそもファンというのは、ある場所の熱を別の場所に移しているだけで、効率の良いものではありませんし、故障する可能性も増加します。本当に効率のよい冷却システムとしては、われわれのRear Door Heat eXchangerを挙げておきます。

――クラウド時代を迎え情報システム部門のあるべき姿は。

諸富 今の情報システム部門、IT部門においては、スクラッチでシステムを構築する機会が減り、運用が主な業務となっています。LOB(Line of Business:基幹業務アプリケーション)についても、IT部門ではなくビジネス部門が、クラウド型のサービスとして調達するケースが増えるでしょう。

 ただわたしは、基幹システムのすべてがパブリッククラウドになるとは考えていません。個人情報をはじめとした機密情報を、どこにデータセンターがあるか分からぬパブリッククラウドへ移管することに抵抗を覚える企業は多いでしょうし、特に金融系事業者にとっては、監査に耐えうる証左を残すという、法対応の問題もあります。

 こういったケースに対応するために、エンタープライズクラウド(企業内クラウド)があります。いずれその構築と運用のために、情報システム部門の評価が高まるでしょう。われわれのSystem x製品群はパフォーマンス、消費電力に加えて本年は「価格」についても積極的な施策をとります。仮想環境のプラットフォームとして注目を集めるブレードサーバについても、一貫してシャーシの設計を変更しないまま最新のアーキテクチャを実装することで、ユーザーの投資を保護してきました。高集積、というニーズについては、既にiDataPlexという回答も用意しています。

 景気はいずれ回復します。その時に勝ち上がるのは、必要なIT投資を行い、「先行者利益」を確保できる企業です。情報システム部門は、経営陣に適切な投資を提言することで、企業経営を主導する部門となるでしょう。

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