最新調査にみるユーザーのIT投資事情Weekly Memo(1/2 ページ)

IDC Japanと米Gartnerが先週、それぞれ企業ユーザーのIT投資事情を映し出した調査結果を発表した。そこから見えてくるものとは――。

» 2009年07月13日 09時06分 公開
[松岡功ITmedia]

投資抑制の中でCIOがこだわるIT調達の中身

 景気の動きは、なお厳しい情勢にある。内閣府が先週8日発表した5月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」は前月比3.0%減と3カ月連続で減少し、受注額として比較できるデータがある1987年4月以降で最低となった。

 5月の実績が前月比マイナスになったことで、4-6月期の見通しも当初予測を下回りそうだ。内閣府が5月に示した4-6月期の見通しは前期比5.0%減だが、すでに4、5月の実績が当初予測を下回っており、4-6月期は同7%程度のマイナスになる可能性がある。

 ちなみに1-3月期は同9.9%減だったので、減少幅は縮小する見通しだが、四半期ベースで5四半期連続の減少となる公算が高まってきた。機械受注統計は半年から9カ月ほど先の産業界の設備投資全般の動きを示すといわれる。政府は国内の「景気底打ち」を宣言しているが、本格回復のカギとなる設備投資はまだ混沌とした状態が続いている。

 そうした中で、IDC Japanが先週6日、今年4月に国内企業1992社のCIOを対象に行ったIT投資動向調査の結果を発表した。それによると、2009年度のIT予算について「削減する」との回答が34.6%にのぼり、「増加する」の14.1%を大きく上回った。とくに新規構築・購入の予算が減少すると回答した企業が32.7%にのぼり、強い抑制傾向がみられた。

 また、IT予算の約3割を占めるシステム運用・保守の予算についても、減少させる企業が23.5%と前年度の18.0%から大きく上昇。企業のIT予算削減の対象が、新規投資から保守・運用費用まで拡大されつつあることが浮き彫りになった。

 興味深いのは、IT調達に関する取り組みにおける調査結果だ。CIOの多くは人員削減や外部委託の減少によって増加したIT要員の業務量調整や、具体的なコスト削減案の策定に忙殺されており、IT調達に関する取り組みとして、新たな技術やベンダーの利用に踏み出す企業は1割程度にとどまっているという。

 その一方で、4社に1社が「インフラの全体最適化」や「サーバ、ストレージの統合」などシステムの抜本的な見直しに着手しており、システム間連携やインフラ統合などは新規構築・購入が厳しく抑制されている中でも、IT投資が行われていく領域になる、とIDC Japanではみている。

 「インフラの全体最適化」や「サーバ、ストレージの統合」は、将来のコスト削減につながる施策だが、同時に企業としての抜本的な構造改革の必要性を感じているCIOが少なくないことを物語っているといえよう。

IT調達に関する取り組み(出所:IDC Japan「IT投資動向に関する国内CIO調査」発表資料)
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