最新調査にみるユーザーのIT投資事情Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年07月13日 09時06分 公開
[松岡功ITmedia]
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SaaSユーザー満足度調査で明らかになった意外な結果

 IDC Japanでは今回のIT投資動向の調査結果から、「システムの抜本的な見直しが進む中で、新たな技術・ソリューションの導入や、それをサポートできるベンダーの利用も徐々に拡大していく。ベンダーは企業のITコスト削減をサポートしながらも、新たな技術・ソリューションを活用した次世代システムにおける収益モデルを検討し、景気回復のIT投資案件獲得に備えることが重要だ」と分析している。

 一方、国内の調査ではないが、米Gartnerが先週8日(米国時間)に発表したSaaSに関するユーザー満足度調査も興味深い結果がみられた。同調査は昨年12月、SaaSを導入済みか導入を検討している米国と英国の企業333社を対象に行われた。

 それによると、今後2年間、SaaSの利用を現状維持するとした企業は58%で、利用を拡大する企業(32%)を上回った。ちなみに利用を縮小あるいは停止するとした回答も5%ずつあった。

 満足度については、「ビジネス向け機能」「プロバイダーの対応」「性能の信頼性」「サービスの信頼性」など16項目にわたって評価してもらったところ、全体の平均点は7点満点中4.74点だった。この評価が高いか低いかより、この点数を起点に今後、定点観測を行い、問題点を洗い出していくことが重要だろう。

 また、SaaSを利用している企業に導入の決め手となった要因を3つ挙げてもらったところ、「技術的な要件を満たしている」が46%で最も多く、以下、「セキュリティ、プライバシー、情報の機密性」(33%)、「統合の容易さ」「ビジネス部門に必要な機能」(いずれも29%)が続いた。

 最も興味深いのは、SaaSについて検討したものの導入を見送った企業の、その理由だ。調査結果では、「コストが高い」(42%)、「統合が難しい」(38%)、「技術的要件を満たしていない」(33%)という点が挙がった。とりわけSaaSはコスト削減効果が注目されているだけに、この結果はぜひとも踏み込んだ分析を期待したい。

 SaaSをはじめとしたクラウドサービスは、まだ歴史が浅いだけに、今後さまざまな形で利用されていく中で欠点や不具合が出てくるだろう。それだけに、こうしたベンダーに偏らないユーザー満足度調査は、問題点を洗い出し克服していくために非常に重要だ。調査自体にもノウハウの積み重ねが必要だろう。メディアも含めて国内でもぜひ積極的に取り組んでもらいたいところだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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