現場で効くデータ活用と業務カイゼン

自家製DBを、CRMにまで高める――エイアンドティーFileMakerで医療機器販売を支援(1/2 ページ)

臨床検査製品の開発・販売を行うエイアンドティーでは、FileMakerを顧客情報管理DBとして導入し、それを営業ワークフローや日報と連携させ、業務を改善したという。

» 2009年09月10日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 血液や尿などの検査は身体の異変を把握するために重要な役割を果たすものだ。エイアンドティーは、その診断に必要となる各種の臨床検査装置や検査自動化システム、試薬の開発、製造、販売などを手掛けるメーカーだ。30年にわたる実績を持ち、その製品は日本全国のみならず、海外でも多くの医療機関で使われている。

販社の分社化で引き継いだ顧客情報をFileMakerで管理

技術本部 TS技術ユニット ユニットリーダー 田村久雄氏 技術本部 TS技術ユニット ユニットリーダー 田村久雄氏

 エイアンドティーが製造している製品は、小型の卓上用検査装置から、多数の検体に対して検査項目を自動的に処理できる大規模な検査自動化システムまで、幅広い。当然それぞれが対象としている顧客層も異なるし、その営業やサポートに適切なスタイルも、また違ってくる。

 例えば、大規模な検査自動化システムの顧客は当然ながら大規模な医療施設となる。その絶対数は限られるが、各種の検査項目に対応したモジュールを組み合わせるなど、ソリューションとしては高度な内容の提案が求められる。案件の規模が大きいのはもちろんだが、商談の期間も長く、顧客との間で密なコミュニケーションが必要となる。逆に、小型の検査装置は基本的に単体で使われるため、顧客側が適切な仕様の製品を選んで購入するという傾向が強くなる。

 こうした販売スタイルの違いを吸収するため、同社では2001年にアットウィルを設立、小型検査機器の営業網を委ねた。だが、そのアットウィルでは、顧客情報を管理するシステムが課題となった。アットウィルでは、エイアンドティーの顧客情報管理システムから引き継いだ顧客情報を、当初はExcel上で利用していたのだ。

 「しかし、Excelを使い続けることには限界も感じていました。もっと使い勝手の良いシステムはないかと探していたところ、アットウィルの営業部門責任者がFileMakerの導入を決めたのです。そこでわれわれも、FileMakerを使い自力で顧客情報システムを作ることにしました」と、エイアンドティー 技術本部 TS技術ユニットの田村久雄ユニットリーダーは振り返る。

 ちなみに“TS”とは、テクノサポートの略称。全国各地で顧客に接する営業やカスタマーサポート(CS)たちに対して技術面での支援を行うほか、開発部門へのフィードバックなどを主な業務としている部署だ。

機能向上を外部に委託しつつも、ユーザー自身でも手を加えられる環境

db-pro 橋本隆之氏 db-pro 橋本隆之氏

 FileMakerを用いた顧客情報システムは、最初はスタンドアロン環境だった。だが、多数の営業担当者が使うには、スタンドアロンでの管理は難しい。そこで、クライアント/サーバ環境へ移行することになった。2005年頃のことである。同時に、システムの機能も強化することになり、例えば客先に納入した装置ごとの状態、例えば故障や修理に関する情報、装置を検査した結果などを加えることにしたという。

 そして、それまでは社員だけで作ってきたが、こうした機能を確実に実現すべく、インテグレーターにシステムの開発を委託することになった。委託先に選ばれたのは、FileMakerの開発やトレーニング、コンサルテーションなどを得意とするdb-pro(有限会社エクスインターナショナル)だった。

 db-proの橋本隆之氏は、FileMakerを次のように評価する。

 「基本的に、ユーザーが開発できるところはユーザー自身に作ってもらい、できない部分をわれわれが手伝う、という方針で取り組んでいます。トレーニングのメニューも、とにかく“覚えるより先に慣れてもらおう”と考えています。そのような取り組みを可能にする使い勝手の良さが、FileMakerの優れた点です」

 db-proではこうした方針から、ユーザー自身がシステムをカスタマイズしていけるよう、システム構築に並行してユーザーへの教育も行うようにしている。アットウィルの顧客情報システム構築の際にも、田村氏らに対してトレーニングを行ったという。

 このような開発手法は、これまで自作してきたアットウィル側にとっても好ましいものだったと田村氏は話す。

 「われわれの目的は、顧客に関する情報を正確かつリアルタイムに管理することです。そのため、自分たちで手を加えて使い勝手を高めていけるのは、助かります。なかなか、こういう手法を提示してくれるインテグレーターはいません。普通、システム開発を外注した場合、ユーザーが使いにくいと思っても、自分たちで手を入れることはできませんよね。“使いにくいまま、使わねばならない”のです」

 実際、db-proが構築したシステムに対し、田村氏らは数々の手を加えてきた。実際にシステムを作ってもらったからこそ、参考になった点も多いという。例えば、db-proが作成したスクリプトを読んで勉強し、それまで触れたことのなかったスクリプト機能を使いこなせるようになったとのこと。

 「定期的な情報交換の中で、アドバイスは行っていますが、エーアンドティーの手によってシステムはずいぶん進化してきました。“わたしが作った部分はどこに残っているのだろう?”と感じてしまうほどです」(橋本氏)

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