あなたの言葉はなぜ他人の心に響かないのか?オープンソースソフトウェアの育て方(4/7 ページ)

» 2009年09月29日 08時00分 公開
[Karl Fogel, ]

中身

 きれいに体裁を整えたメールは読者の気を引くことでしょう。しかし、実際に読んでもらうには中身が大切です。「これさえ守れば中身のある内容を書ける」というようなルールはもちろんありません。しかし、それに近づくための原則なら幾つか挙げることができます。

 読む人のことを考えて書くようにしましょう。活発に活動しているオープンソースプロジェクトには、さまざまな情報がつきまとっています。メールの読み手が、それらの情報をすべて知っているものと期待してはいけません。実際のところ、彼らはそんな情報など知ろうともしないこともあるものです。可能な限り、読み手にとって便利な情報を提供しましょう。例えば、ほんの数分時間を使うだけで、メーリングリストのアーカイブで特定のスレッドを表すURLを調べることができます。それを示すことで、読み手が同じことをする手間を省くことができるでしょう。さらに5分から10分ほど余計に時間を割けば、複雑になったスレッドの簡単なまとめを作成することもできるでしょう。これは、あなたの投稿の背景にある話の流れを伝えるのに役立ちます。

 こんな風に考えてみましょう。プロジェクトがうまくいけばいくほど、メーリングリストや掲示板の書き手に対する読み手の比率が高くなります。あなたの投稿する内容がn人に読まれているとすると、あなたが少し時間を使って作業をするだけでn人ぶんの同じ時間を節約できるのです。nが大きくなればなるほど、この価値は向上します。そしてあなたがそうしているのを見れば、ほかの人たちも同じようにしてくれるようになるでしょう。その結果、プロジェクト全体の効率が向上することになります。n人が苦労するのと一人が苦労するのとどちらがいいかといえば、後者でしょう。

 物事を誇張しないようにしましょう。オンラインの投稿では、話が大げさになりがちです。例えばバグを報告する人は、開発者たちの気を引くようにわざと大げさに話すこともあります。ちょっと気になる点が見つかったときに「この深刻な問題のおかげで、わたし(そして友人や同僚や親戚一同)はまともにこのソフトウェアを使うことができない」といった具合に報告するわけです。しかし、この問題はユーザーからの報告に限ったことではありません。プログラマーたちだって、技術的な議論をしているときに同じようなことをしています。特に、どちらが正しいかという問題より各自の好みにかかわるような問題を扱う際にその傾向があります。

“そのやり方だと、コードが読みにくくなっちゃうよ。保守する人はたまったもんじゃないだろうな。それに引き換え J. Random の提案した方法は……”


 もう少し控えめな言いかたにした方が、実際の気持ちは伝わりやすくなります。

“確かにそれでも動くよ。でも、可読性や保守性を考えると、それは理想的なやり方ではないと思うんだ。J. Random の提案する方法だとそんな問題は発生しない。なぜなら……”


 誇大表現を完全になくすことは不可能でしょうし、また一般にそうする必要もありません。ほかの誤解に比べると、誇大表現が及ぼす被害はそれほどでもありません。主に書き手側が損をするだけのことです。読み手側はそれを補正して読めるので、単に書き手が少し信頼性を失うというだけだからです。プロジェクトにおけるあなたの影響力を考えると、不要な誇大表現は避けるようにしておくべきです。そうすると、あえてキツめに表現する必要が生じた場合に周りの人たちにそれを受け入れてもらいやすくなります。

 よく見直すようにしましょう。ある程度以上の量の文章を書いた場合は、完成した文章を実際に送信する前にもう一度頭から読み直すようにします。作文の授業でも同じことを教わったかと思いますが、これはオンラインの議論でも特に重要です。オンラインの議論は断続的なものになる傾向があるので(メッセージを書いている途中で過去のメールを読み直したり、何かのWebページを確認したり、何らかのコマンドを実行してデバッグ出力を取り込んだり……)、ついつい論旨を見失いがちです。断続的に書き上げた後で一切チェックせずに送信したメッセージは、読み手にもそのように受け取られてしまいがちです。これは書き手にとってもうれしいことではありません。きちんと時間をとって、書いた内容を見直しましょう。投稿内容がきちんとまとまっていればいるほど、あなたのメッセージを読んでもらいやすくなるでしょう。

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