世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

世界で勝つ日本企業の中国攻略法世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(3/3 ページ)

» 2009年11月02日 10時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]
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上がる購買力

 永田氏は、現在の日本企業による海外進出について「基本的には、これまで日本企業がやってきた海外展開と変わらない」話す。狭い日本だけでなく、成長の機会を外に求めたのは今始まった話ではない。だが「中国人の購買力向上は非常に魅力的」とも指摘する。

 現実的には、特に中国には国産ブランドが強い力を持っているケースが多く、商品カテゴリーごとに状況がだいぶ異なっている。デジタルカメラ市場はローカルブランドがほとんどないため、市場は「ソニー vs. キヤノン」あるいは「ソニー vs. Samsung」のように、外資系企業同士の争いが激化している。このように、ローカルブランドの存在感があまりない分野については、外資系企業が入り込む余地が十分ある。

北京のソニーエクスプローラサイエンスを子供たちと一緒に見学

 一方、テレビ市場には十数社のローカルブランドがひしめいている。全体の売上高でいえば「6〜7割近くをローカルブランドが占め、残り3割の中にソニー、シャープ、Samsungがいる」。デジカメとは違い、競争相手がローカルブランドに向かった途端に、液晶パネルの調達方法、政府が国策でローカルブランドに税制面の優遇措置をとっていることなどさまざまな競争の論理が働くという。

 中国でビジネスを展開する上で何が鍵を握るのか。国土も広くて人口も多い中で、販売のネットワークをどう設置し、どのように商品を届けるかが鍵を握る。また売った後のサービスについて、どれだけのサービスステーションを設けるかも重要だ。販売ネットワークとサービスステーションの2つは「中国ビジネスの成否を左右する販売インフラ」と永田氏は位置づける。インフラを整えなければ販売エリアを点から面というようには拡大できず、面にできなければ売上高を上げられない。

 CRTテレビの時代からローカルブランドはこうした販売インフラを整備していた一方で、ソニーを含めた海外ブランドはインフラを現在も構築中という状況だ。政府は「農村にテレビを」という取り組みに着手しており、ローカルブランドに優位に働くような仕組みが現実にある。

 今後、中国は液晶パネルを国内で調達する体制を整えると見込まれており「液晶ディスプレイの生産拠点として中国の存在感が高まりそう」(同氏)な状況にある。米国では2008年、「VISIO」と呼ぶ格安の液晶テレビが突然登場した。

 これは、中国の工場で製造されたテレビに米国企業がブランドだけを付与したようなイメージの製品だ。アパレル業界によくみられるビジネスであり「これまでのテレビ業界のやり方とはまったく異なる」。ソニーにしてみると、また1つ難しい戦いを迫る要因が増えたことになる。

 日本を代表する企業といえども、中国でのビジネスは一筋縄ではいかないようだ。特集「世界で勝つ 強い日本企業のつくり方」では、中国を含め日本企業が現在取り組むべき海外展開のヒントをビジネス、IT、文化などさまざまな側面から提示していく。

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