世界で勝つ 強い日本企業のつくり方
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» 2009年11月09日 08時30分 公開

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:大前研一の辛口ニッポン応援談(前編) (2/5)

[構成:怒賀新也, 土肥可名子,ITmedia]

戦後の米進出の経験を生かせ

 これまで日本企業が米国に進出してきた経験が生きるのは、「コミットしたら20年やり続ける」ということだろうね。インドに対して20年コミットしてやり続けるという決意を持っている企業はまずない。みんなが行くからうちも、といった程度であろう。インドに送り込んでいる人材を見ても、本社の課長クラスだ。

 米国進出のとき、例えばソニーは盛田昭夫氏自身がやったし、ホンダでもどこでもそうだけど、米国法人のトップをやったら将来は日本法人の社長になるような人材、トヨタでいえば張富士夫氏がその例だけど、そうした人物がやってきた。

 自動車でいえばカリフォルニアからスタートして、南部に行って次に東部に行って最後にデトロイト周辺の中西部と、スムサ(SMSA、Standard Metropolitan Statistical Area、標準大都市圏)とよばれる日本でいう中核自治体みたいなところが2000くらいあるんだけど、そこを全部カバーしなければいけない。

 それをちゃんとカバーしてディーラーを設置してサービス網を拡充し、ブランドを浸透させるのに、最低15年、普通は20年かかる。こういう覚悟で中国やインドを攻略しようとしている企業があるかといえば、ほとんどみたことがない。

 ソニーは主として営業を見ていた盛田さんがアメリカに400回行ってるんだ。そのうちの何年かは家族で現地に住んでいた。そういう人が乗り込んで行って米国市場を開拓する。こうしたコミットメントがインドや中国にも、そしてインドネシアでも必要だと思うが、多くの企業はせいぜい中国で部長クラスの人間を社長に送り込んでいる程度。インドだと課長クラスというところも多く、(成長の全く見込めない)国内にくらべて明らかに過小投資だ。インドネシアだったらもっと若い人間が送り込まれる。20年かかるので、若い人を送り込むのはいいのだが、その人たちも少し成功すると転勤を命じられてしまう。国内人事制度の一環として海外人事をやる、というところが問題なんだ。

 欧州は今や人口が約5億人おり、2億5000万人の米国を凌ぐ世界最大の市場になった。しかし、日本企業のEU市場対応はだいぶ遅れてしまった。進出が早かった分、国別組織になってしまっていて、汎ヨーロピアン戦略というか、EU全体の戦略を遂行するための組織がない。国別が精いっぱいで、ドイツ会社、フランス会社……、イタリア会社あたりで力尽きてうまいくいかない、っていうのが多い。

 スポーツ用品メーカーのNikeなどは今から10年前にベルギーのロックダールというところに中央物流センターを作り、ロッテルダムで荷揚げした商品をすべてロックダールに集めてEU内なら24時間以内にどこにでも納品できるシステムを作った。

 他にもスペイン北西部のラ・コルーニャに本社があるZARA(インディテックス社)というアパレルメーカーも、本社の物流センターにはトラックがずらっと並んでいる。欧州全域に24時間以内に配送できるんだ。トラックでまかなえないところは飛行機。DHLが並んでいて、全世界48時間以内でカバーしている。

 そういう物流システム、マーケットそのものが1日で全部到達できるというような感覚を、システム構築にまで持ち込めたところがまだ日本企業にはないね。ZARAはトヨタの「ジャスト・イン・タイム」から学んでシステムを作ったと言っていたが。欧州を世界最大の市場として国別組織を撤廃し、かつて米国でやったような密度の濃い戦略をやっていく必要があるだろう。そういうところが日本企業の大きく遅れた部分として浮かび上がってきた(詳しくは11月6日に朝日新聞社から発売された「衝撃:世界最大の超国家EUパワーの誕生!」参照)。

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