間もなく師走、「仮想化元年」を振り返るe-Day(1/2 ページ)

年の初めに「今年こそ○○元年」と謳うのがメディアの常だが、その予想の当たりハズレは問わないこととして、結果からすれば、2009年は「仮想化元年」となったのは間違いない。

» 2009年11月25日 08時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 朝晩の冷え込みが増してきた。今年も師走と呼ばれる季節があわただしくやってきそうだ。少し気は早いが、2009年のIT業界を振り返ってみたいと思う。

 年の初めに「今年こそ○○元年」と謳うのがメディアの常だが、その予想の当たりハズレは問わないこととして、結果からすれば、2009年は「仮想化元年」となったのは間違いない。

 昨秋のリーマン・ブラザーズの経営破たんに端を発した世界同時不況は、日本の企業にも襲いかかり、売り上げの落ち込みが激しいところは、当然のことながらコストを削ることでしのぐしかない。残念ながら情報システム部門も例外とはならず、多くの企業で2割から3割の予算削減が行われたという。そもそも日本の企業では、保守運用にかかる定常的な費用の比率が6割から8割にも達するといわれており、これでは新規プロジェクトに回す予算がないに等しい。どう遣り繰りすべきか途方に暮れる中、それは工夫のしどころと腹をくくった情報システム部門の責任者も多かったのではないだろうか。

 仮想化に目を向けるだけでなく、多くの企業が実際に仮想化に着手した要因としては、こうした厳しい経済状況から求められた「コスト削減」が先ず挙げられるだろう。

 コスト削減という一事だけでなく、同時に別の恩恵をもたらすことも、仮想化が一気に普及した背景にある。広範な支持を得るものには、必ずそうしたところがある。仮想化の場合は、「アジリティ」だろう。

 仮想化は、サーバの集約による保守運用コストの削減だけでなく、プールされた仮想化リソースを活用して迅速なプロビジョニングを実現してくれる。従来であれば、サーバを発注し、何週間もかけてOSやミドルウェアのインストール、諸々の設定を行わなければならなかったところだが、ちゃんとした運用管理ツールがあれば、ユーザーや開発者が望むインフラを数時間で用意できるようになる。

 さらにサーバのディスクイメージが何らかの標準によって記述できれば、パブリックなクラウドサービスを活用し、より柔軟なインフラの調達にも道が開けるだろう。

 システムが仮想化されることの恩恵は、「高可用性」(HA)や「災害対策」(DR)にも及ぶ。従来であれば、特定のミドルウェアに依存したり、システムも物理的に二重化しなければならず、コスト、運用負荷ともに障壁が高かったこれらのソリューションも、ちゃんとした運用管理ツールがあれば、現実味を帯びてくる。

ハイパーバイザーはコモディティに

 言わずもがなだが、こうしたソリューションを実現するうえでより重要となってくるのは、VMwareやXenServer、あるいはHyper-Vのハイパーバイザーではない。システムのインフラを構成する物理的なサーバ、I/O、ネットワーク、そしてストレージを丸ごと仮想化し、ユーザーや開発者らの必要に応じて迅速に用意できる運用管理ツールが求められてくる。しかも、通常はすべてが仮想世界に移行しているわけではないので、物理的なサーバも混在している。これらをひっくるめて同じツールから面倒を見られるかがカギとなる。

 シトリックスがXenハイパーバイザーと基本的な管理ツールからなるXenServerを無償化し、より高度なプロビジョニングサービスなどを実現するEssentials for XenServerにサーバ仮想化製品の収益の軸足を移したのは、ハイパーバイザーのコモディティ化と、より高度な仮想化リソース管理ツールの重要度が増していることを反映したものといえる。

 鬼が笑うが、2010年にホットな技術分野は、このあたりではないだろうか。

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