XenServerの無償化は次なる価値創造への布石、シトリックス会長の大古氏ユーザーとパートナーにメリット

シトリックスはこのほど、サーバ仮想化製品「Citrix XenServer」を無償化した。その狙いと今後の展開について会長の大古俊輔氏に聞いた。

» 2009年04月14日 06時45分 公開
[聞き手:石森将文, 國谷武史,ITmedia]

 シトリックス・システムズ・ジャパンは、サーバ仮想化製品「Citrix XenServer」を3月31日に無償化した。無償化に踏み切った狙いと今後の展開について、大古俊輔会長に聞いた。

大古氏

―― 昨年は仮想化技術に対する企業の関心が非常に高まりました。顧客ニーズにも大きな変化がありましたか。

大古氏 2008年後半に起きた世界的な経済危機によって、多くの企業が大胆なコスト削減をしなければならないという課題に直面しています。しかし、このような時勢はむしろ大きなチャンスであり、システム環境を変革する絶好のタイミングだと考えています。

 ユーザー企業と話をすると、今の時期はコストも含めたIT環境全般を見直し、再び経済が上向きになった時に備えて、次なる成長への基盤を準備したいという意見が聞かれます。ITに対する今の企業ニーズは、特に柔軟性やセキュリティ、TCO削減への関心が高く、これらの課題を仮想化によって実現したいと考えています。

 例えばセキュリティでは、情報漏えい対策が大きな課題となっており、さまざまな技術的な対策や啓発手段が登場しています。しかし、抜本的に対処するにはなるべくクライアント環境にデータそのものを置かないことが重要ですので、仮想化によってデータ本体をセンターに集約し、必要な時に必要なデータを扱うようにすれば漏えいのリスクを減らせます。また、クライアント環境の仮想化も注目されつつあります。

 現在ではOSやアプリケーションの脆弱性を突く攻撃が急増していますが、クライアント環境をセンターに集約すれば、管理者がセキュリティパッチの適用作業を効率的に行うことができます。このように、現在のシステム環境が抱えるさまざまな問題を解決する上では従来製品を再び購入するというよりも、新たな技術を利用したいという選択肢を求める声が高まっていますね。

―― なぜCitrix XenServerの無償化に踏み切ったのでしょうか。

大古氏 特別な事情があったわけではありません。われわれは、以前から顧客ニーズや市場の変化に応じて新たな価値を提供するためにさまざまな施策を展開しており、今回の無償化もその流れの1つになります。

 柔軟性のあるシステムを実現するために、ベンダーにはユーザーの限られた予算の中で価値を提供できるかどうかが重要になります。また、最近では仮想化製品のコモディティ化が進み、基本的なプラットフォームについては差別化が難しくなっています。そこでわれわれは、ユーザーやパートナーへ新たな付加価値を提供するためにXenServerを無償化しました。

 これにより、XenServerに必要だったコストをユーザーがほかに実現したい部分に割り当てられるようになります。そして、パートナーはユーザーが新たに投資する部分に対して自社のサービスや価値を提供できるようになるわけです。XenServerの無償化は限られたIT予算の柔軟性を高め、ユーザーやパートナーに新たな投資機会を提供するという価値を実現します。

―― 無償化をきっかけにシトリックスはどのようなビジネスを展開しますか。

大古氏 ユーザーやパートナーからは、仮想化を進める上での選択肢が広がることを期待する声が強まっており、われわれはこれらの声に応える新製品として統合管理環境を提供する「Citrix Essential」を展開します。

 すでに他社を含めてさまざまな仮想化プラットフォームが登場し、特にユーザーサイドでは仮想化技術を全面的に導入するフェーズに入り、なるべく導入や運用大きな投資をせずに仮想化を実現したいと考えています。そうした場合、1CPUあたりいくらというライセンス体系はユーザーにとって大きな負担になるので、われわれはプラットフォーム自体のコストを抑え、運用管理の部分で差別化を図りたいと考えています。

 Citrix EssentialはMicrosoft Windows Server 2008のHyper-Vもサポートしており、Citrix Essentialを利用すればXenServerであっても、Hyper-Vであっても1つのコンソールで管理できます。ユーザーは必要に応じて2つのプラットフォームを自由に活用できますので、仮想化に伴う計画に柔軟性を持たせることができるでしょう。

 われわれは仮想化の世界で20年以上の経験があり、XenServerの無償化は仮想化へ取り組んでいるユーザー動向に呼応した1つの結果といえます。今後は仮想化を活用していく上でクライアント環境やアプリケーションの利便性を高める取り組みを推進したいと考えています。

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