世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

日本流と現地流の調和をどう生み出すか――ソフトブレーン・駒木専務世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(1/3 ページ)

オフショア開発などで古くから中国進出に進出するソフトブレーンは、事業が軌道に乗るまでに人材面や社会環境の変化などのさまざまな課題に直面したという。それをどのように乗り越えて事業基盤を築いたのか、同社に聞いた。

» 2010年01月06日 08時00分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]

 営業支援システム製品「eセールスマネージャー」などを手掛けるソフトブレーンは、1997年から中国に進出している日系ソフトベンダーの1社だ。現地では日本からのシステム開発受託を中心とした事業を展開しているが、事業が軌道に乗るまでには人材面や社会環境の変化などのさまざまな課題に直面したという。

 受託開発の事業を担当するソフトブレーン・オフショア(中国法人は「軟脳離岸資源」)の社長(総経理)兼ソフトブレーン専務取締役の駒木慎治氏に、現地で直面した課題や課題を乗り越えるための取り組みなどを聞いた。

責任感や意欲の違い

駒木専務 駒木慎治氏
――今でこそ中国は世界的なオフショア開発の拠点の1つとして広く知られていますが、進出当初は苦労された点も多かったのではないでしょうか。

駒木 最も大きな課題の1つに、日本の開発者意識と中国の開発者の意識に大きな違いがありました。“日本流”の開発は人のスキルに依存するところがあり、例えばプログラマーやシステムエンジニア、プロジェクトマネジャーといった職種があっても、一人の人間がプログラミングもできれば、設計やコーディング、デバックもできるといったことが求められがちです。しかし、中国では個人のスキルアップとして技術を習得していくという意識が強く、仕事に対する意識でも自分に与えられた職責以外の仕事はしないというのが一般的です。

 例えばプロジェクトの進行上でトラブルや納期の遅れなどがあった場合、日本ではまず会社や組織としてどう対処していくかが優先されます。中国ではあくまで自分の仕事に関わる課題には自分で対処していきますので、隣席の別の担当者がトラブルで多忙になっても、周囲が手助けするようなことは少ないですね。

 日本では「何とかお願いしますよ」といったあいまいな要求が受け入れられがちですが、中国は欧米のような契約社会が浸透していますので、日本企業が中国に同じような要求をしても受け入れられないことがあります。その点を理解できない日本企業は多いようです。一方、決められた職務に対する責任感は日本以上に強く、熱心に仕事をやり遂げてくれます。仕事のあいまいさが許容される“日本流”のやり方は、世界から見れば特殊なのかもしれません。

―― 人件費の高騰や人材流出なども重要な課題になりつつあります。

駒木 北京や上海など中国の中でも大きな都市には人材が多数集まっていますので、外資系企業などが大規模な求人を行うと一斉に人材が動くことになり、特に優秀な人材の流動性が非常に高まっています。また、中国は経済成長も著しいので平均的な人件費も上昇しています。

 例えば北京の新卒開発者の平均月収は4年ほど前では約2500元でしたが、2008年は約3700元です。上海もほぼ同様ですし、日系のオフショアが多い大連でも3300〜3500元ほどになっています。中央政府による雇用保護も積極的に行われているの、例えば残業の賃金なども日本よりずっと高額です。

 さらには今後1〜2年で中国の富裕層が急増すると予想され、年収1000万円ほどの高額所得者の人口が日本の総人口を上回るようになるでしょう。“アメリカンドリーム”のように若者でも成功できる可能性があり、優秀な若い人材がどんどんと社会に進出していくと思われます。

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