CIOは本当に必要か戦略コンサルタントの視点(1/2 ページ)

企業は情報システムをどのような考え方で運営していくべきか。戦略コンサルティングファーム独ローランド・ベルガーに話してもらう。2回目のテーマは、CIOの存在意義についてだ。

» 2010年02月23日 14時00分 公開
[大野隆司(ローランド・ベルガー),ITmedia]

 所有から利用への流れが現実味を帯びるなど、企業が活用するITの在り方が変化しつつある。今後、企業は情報システムをどのような考え方で運営していくべきか。戦略コンサルティングファーム独ローランド・ベルガーに連載してもらう。2回目のテーマは、CIOの存在意義についてだ。


 モノの見方や史観は、自身の経験や知識、利害関係によって規定されます。企業の成功要因を挙げる場合でも、人事を生業にしている会社ならば人に焦点を当てた提案をするだろうし、プリンタ業者ならばプリンタの性能で成功の秘けつを語ります。

CIOの誕生

 CIO(最高情報責任者、Chief Information Officer)は1980年代に米国で誕生し、日本に登場し始めたのは1990年代からです。現在ではCIOあるいはIT担当役員といったポジションは大手企業の8割近くで設置されているとの調査もあります。(日本情報システム・ユーザー協会 第15回企業IT動向調査2009より)

 CIOの責任・役割は、1990年代半ばまでは情報システム部長のそれを大きく超えるものではなかったのが実態です。今日、多くのコンサルティング会社、大手システムインテグレーターや大手総研、さらには大学などの研究畑から、CIOの責任・役割について提言がされています。これを見ると今日のCIOがやるべき仕事は、高度かつ多岐にわたっていることが分かります。次の3つが挙がります。

  • CIOの仕事〜CIO誕生当初から存在

 既存システムの安定的な保守運用や新規システムの確実な開発、またセキュリティを中心としたIT面でのルール制定、導入などが挙げられますが、これは情報システム部としてやるべき仕事の範囲といえます。またこれらを実行するために必要となるシステムベンダーを適切な品質、価格で調達することも最も重要な責任の1つといえます。

  • CIOの仕事の拡張〜90年代半ばから

 次は、一般的にはIT化戦略の立案といわれるものです。前回の変化する情報システムのパラダイムで述べたように、ITの投資額やコストが増大してきたことと、ITが業務遂行に不可欠になってきたことにより(これは必ずしも競争優位創出に不可欠ということを意図はしていない)、IT化の長期的、計画的な実施が求められるようになったわけです。IT化戦略では、全社のIT資産の把握と最適化――重複の排除など――や、IT投資の優先度の設定なども視野に含められるのが一般的です。

 このIT化戦略は、仮想化によるサーバ統合などの情報技術の世界や、アウトソーシングの導入などの情報システム部門の世界など、情報技術畑で比較的完結しやすいものを指す場合が1つ。営業力強化プロジェクトなどにおいて、ITのみならず業務プロセスも含めた将来像の描写を意味するケースも1つとしてあります。ITと業務プロセスの戦略、設計の責任者といった形です。

CIOの仕事の超拡大――CEOの片腕に

 最後に、2000年前後から出てきた考え方に「CIOはITを切り口として活用し、事業戦略の策定や業務改革のリーダーシップをとり、CEOの一番の片腕たるべし」というものがあります。例えば、営業力強化プロジェクトなどでは「CIOを中心にITを活用した新営業体制や営業スタイルを打ち出すべし」といったものになるでしょう。

 確かに「CIO(およびIT部門)から、ユーザー部門へのソリューション提案の事例や行い方」といったセミナーや会議を見かけることがあります(これに対して新規事業戦略などの事例はあまり見かけません)。

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