世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

世界で勝つにはキャッシュの管理が不可欠世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(2/3 ページ)

» 2010年02月26日 08時00分 公開
[竹内史尚(アビームコンサルティング),ITmedia]

取り組みが進まない理由と求められる対応力

 グローバルレベルでの財務施策が進まない理由は、さまざまある。例えば、規制や税などの問題だ。「国によっては規制があり思うように財務オペレーションが実行できない。キャッシュアウトを伴う源泉税の問題があり、費用対効果面で施策が打てない」などが主な理由だ。

 これらは、財務担当者が上層部への「できない理由」を説明する際の格好の材料となっているが、「進まない理由」を説明するには十分ではない。事実、一部の先進企業をみると、規制を鑑みできる範囲で施策を積極的に打ち、税の問題もコストと割り切り、全体最適を図ることでコストを上回る効果を生み出し、課題を克服している。

 根本的な「進まない理由」に人材の問題が大きいとわたしは考える。グローバル財務となると、海の向うの担当者や銀行も含め、利害関係者が増える。自社のグローバル財務戦略を描き、多くの関係者と調整し、施策を実行、定着させるまでには、それなりのパワーとスキル、海外財務オペレーションにかかわる知見を要する。

 つまり、グローバル企業の財務部門においては、社内のほかのコーポレート部門や上層部、海外拠点を十分巻き込んだ上で、銀行、ITベンダーなどを含む外部リソースを有効に活用し、自社の企業背景や課題に照らし合わせた財務施策をデザインする力と、そうしたプロジェクト全般を推進・リードする力が求められているといえる。

 こうしたグローバル財務基盤整備の推進役を担う「人材」育成が急務といえる。

 昨今、経営効率化の観点から本社部門のスリム化が進み、日々の業務に追われ、企画や戦略(デザイン)策定といった機能を十分果たし得るだけの余裕が、企業になくなりつつあると聞く。財務インフラ整備が、限定的でかつ思うように進まない一番大きな要因が、実は、こうした企業内部の事情にあるのではないかと、わたしは危惧する。

 海外事業の拡大傾向からも、財務部門がイニシアティブをとり、堅牢な財務インフラを整備するフェーズに既に移っているとわたしは考える。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ