点検:ストレスなきデジタル情報整理術

「残業ゼロ」に向けて社員の能力を引き出す方法――元トリンプ社長の吉越氏点検 ストレスなきデジタル情報整理術(2/3 ページ)

» 2010年03月12日 08時00分 公開
[聞き手:岡田靖,ITmedia]

ITの使い方

―― 目先の問題ばかりに取り組むのでなく、働き方の仕組みを変えていくわけですね。

吉越 会社が本来すべきなのは、不自然な仕組みを改善していくことです。例えば道路が渋滞するなら、車線を増やしたり迂回路を作ったりするわけです。これは「戦略」とも言えますが、日本人は戦略を何か奇抜な考え方のようにとらえていて、結局は理解しづらいものと考えてしまいがちなのです。決してそんな難しいことではないのです。

 先日、わたしがトリンプの社長をしていたころに採用した情報システム担当者からメールが届きました。彼はトリンプの後に南アフリカのスーパーマーケットチェーンへ転職したのですが、そこでは請求書が週に150万枚も届き、430人もの社員が人海戦術で処理をしているそうです。彼はメールの中で、「トリンプではだいぶ以前に解決していましたよね」とつづっていました。

 トリンプでは10年以上も前に請求書の処理をシステム化していて、Web上で請求書を作成でき、発注番号から稟議書が出されているものかどうかを自動的に照会します。確認されれば担当部署へ支払いの指示が伝わり、決済をして経理部門に通知されます。最終的に経理が承認すれば、後は条件に従って自動的に払い込まれる仕組みです。

―― 今でいうワークフローのような機能を実現したシステムですね。

吉越 ここでは、組織内部に持っている情報に合わせて仕事が流れるようにしているので、本当に便利なものでした。このようなシステムはいくらでも作れるのに、いまだに日本企業の中には、この南アフリカの企業のように人海戦術を片付けてしまおうという環境が残ったままです。なぜ効率化しないのかと不思議でなりません。

―― ITの活用では、例えば請求書などの書類を電子化してシステムに取り込んでしまえば、取り扱いが簡単になるなどの恩恵もあります。

吉越 以前は技術的な制約から、書類を取り込もうにもエラーが多発して苦労したものです。しかし、今は少ないコストで手軽にきちんとしたデータとしてシステムに取り込めます。これを保管して活用するならデータベース化という方法もあります。一方で、何かを書いて考えたりするような作業には、紙とペンも必要です。手で書いた資料であっても、電子化すればシステムで容易に読み込むことができ、必要に応じて紙の書類で仕事をしてもいいわけです。

―― 業務効率化を目的にしたシステム導入では、しばし苦労を伴うシーンが珍しくありません。例えば「仕事を変えるな」といった反対意見が寄せられるケースがあります。

吉越 会社の環境を効率化しようとする時には常にそうした苦労があるでしょう。特にコンピュータの場合は如実に表れますね。しかし、会社は常に業務を改善して効率化していかなければならないので、システムにも頻繁に変更が発生します。システムはコストを掛けず柔軟に変更へ対応ができるものでなければなりません。導入だけで数千万円もの投資が必要なシステムでは、運用後の問題点を改修するコストを捻出できず、仕方なく人材を雇用して対応させているという失敗例も聞きます。これではシステムを導入した意味がありません。

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