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» 2010年05月28日 19時00分 公開

コントロール不能な口コミと仲良くするには:ソーシャルメディア時代の企業ブランディング戦略 (2/4)

[聞き手、構成:谷古宇浩司、鈴木麻紀,ITmedia]

ソーシャルメディアを活用したブランディング戦略

ITmedia 生活者とのコミュニケーションの仕方に変化が訪れたことで、企業のブランディング戦略にも方向転換が迫られているようですね。

斉藤 そうですね。しかし、ブランディング戦略においては、生活者とのコミュニケーションは必須の要素ではありません。モディファイの小川浩さんがこんなことを言ってます。

 「Appleは史上最高にソーシャルメディアを“結果的に”活用している」

 Appleは「唯一無二の最強の製品を作る」という目標を立て、徹底的に実践している企業です。商品の質でブランディングをしているわけです。Louis Vuittonも同じ。彼らにとって、生活者とのコミュニケーションはブランディング戦略上のマイナス要因となる可能性がある。

 一般的に、今まで企業がブランディング戦略で採用していた手法には巨額の資金が関係していました。お金を投下して、極端に言うと、「本来の企業のイメージ」とは違うイメージを作り上げるわけです。例えば、タレントを使って偶像を作り上げ、イメージ作りをする。かなり強力な「整形」と「お化粧」をしていた。

 でも今は「あなた(企業)のスッピン、知ってますよ」と生活者が言う。「無理にお化粧しても、わたしはあなたのスッピンを知ってるし、整形前の顔も知っているよ」と。ソーシャルメディアでやりとりされる膨大な情報は、企業だけではなく、ありとあらゆる存在の虚偽の姿を暴いてしまいます。偽りのイメージは通用しなくなってきたのです。それは人間同士の関係でも同じですよね。親しくなればなるほど、人間的な魅力を感じるものです。そして、だんだんその人のことが好きになります。心理的に近ければ近いほど、人間って、お互いを好きになる傾向がありますよね。

 だから、ソーシャルメディアが普及しつつある現代においては、一般の企業にとって、お金をドッとメディアに投下してブランドイメージを構築するよりも、「人間対人間」という感覚で生活者に近づく方が、企業ブランディングの構築という意味では効率的になってきているのです。

 しかし、そのやり方は、今までとはまったく違うやり方なわけです。今までは、企業という1点からマスに対して、つまり、不特定多数に対してのブランディング戦略を展開してきた。企業目線ですね。これからは1対1の話し合いが求められるわけで、それは人間対人間の話し合いと同じことなのです。ブランディングの方法論における重点が、お金からコミュニケーションにシフトして、しかも、コミュニケーションの方が効果的になってきたと言える。

 ある航空会社の例を紹介します。事故があったときに、企業にとって都合のいい発表内容や写真を出しても、事故が発生した時点で乗客がツイートしたりYouTubeに動画をアップしてしまっている。マスメディアの記者はそれを知っており、常にソーシャルメディアにアンテナを張っている。マスメディアは企業の広報より先に、生活者が発信している生の情報をとらえられるようになった。その結果、(企業の広報ではなく)情報を発信した生活者にインタビューをし始めています。

ITmedia ブランドアップのためにお金を投下して、都合のよいイメージを作り出そうとしても逆効果になるということですね。

斉藤 逆効果ですね、実態と違うわけですから。まずは、生活者に信頼してもらうということが重要なのです。生活者に貢献することで、信頼を勝ち得、共感してもらって、好きになってもらう。「おはようございます」に「おはようございます」と返す単純なやりとりでも、生活者にとっては、とてもうれしいことなのです。

 2〜3年もすれば、企業と生活者との親密なコミュニケーションというのは当たり前のことになると思います。いまはまだ9割以上の企業が企業目線で生活者と接しているのではないでしょうか。

Twitterはフロー型のソーシャルメディア

ITmedia ソーシャルメディアにはさまざまな種類があります。Twitter、ブログ、FacebookなどのSNS……。それぞれに特徴があり、求める成果によって使うツールも違ってくると思います。

斉藤 日本の場合は、それほど種類が多くはないので、複合的に使うのがよいと思います。

 Twitterはフロー型のソーシャルメディアです。情報をストックしておくツールとしては、海外ではFacebookがある。Facebookは、動画、写真などさまざまなファイル形式を集約することができる。そういうストックの場が日本にはありません。いわゆる情報のハブとなるツールが日本には存在しないのです。それでもツールとしては、Twitter、ブログ、YouTube、この3つは使えます。Facebookは日本ではまだそれほど普及していません。

ITmedia 企業はFacebookに企業ページを作って、そこに情報をストックし、ハブとして活用しながら、いろいろなツールを組み合わせて、生活者とコミュニケーションをしていく……。

斉藤 先進的な企業はそうです。

ITmedia 日本の企業は、ここには入らないんですか?

斉藤 これからでしょうね。日本のFacebook普及率はまだ人口の1%ぐらいですし、ユーザー層が特殊です。ソーシャルアプリの開発者とか。

ITmedia TwitterとYouTube、そしてブログ。企業が生活者とコミュニケーションを取るためのツールとしてはそれぞれで異なる機能を持っていますね。

斉藤 Twitterは4つの用途で活用できると考えています。「販促」「ブランディング」「顧客サポート」「商品開発・企画」です。

 YouTubeは、ブログなどに組み込んで動画コンテンツとして使えるツールという位置付けですね。

 ブログはTwitterと組み合わせることで、企業のホームベース的な役割を担うことになると考えています。先ほどお話ししたように、Twitterはフロー型のツールなので、情報をストックするという意味では、ブログの方が優れています。ブログは専門性をアピールし、Twitterは人間性をアピールするツールとして、それぞれの違いを説明すると分かりやすいと思います。実際、パーソナル・ブランディングのためには、そうした使い分けをするのがベストだと思います。企業も同じです。少なくとも弊社(ループス・コミュニケーションズ)はそういった使い方をしています。

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