iPhone、Xperia、HTC Desireといったスマートフォンの売れ行きが好調だ。2010年の国内スマートフォン市場は拡大傾向にある。メーカー別の市場推移やMID/スマートブックなどの競合製品の動向を踏まえながら、同市場の現状と今後を俯瞰する。
「アナリストの視点」では、アナリストの分析を基に、IT市場の動向やトレンドを数字で読み解きます。
これまで、日本のモバイル環境下におけるインターネットサービスは、NTTドコモの「iモード」やauの「EZweb」が代表的な存在だった。これらのサービスは通信事業者が開発し、端末、ネットワーク、サービスをまとめて提供していた。消費者に最適化されたサービスの提供が良質なコンテンツやサービスを生み、順調に成長を遂げてきた。
携帯メールは、音声通話が主体だったそれまでのコミュニケーションスタイルを一変させるインパクトをもたらした。21世紀以降、携帯電話とモバイルインターネットサービスは、日本の消費者にとって不可欠な生活インフラに成長した。
2007年以降、3G/3.5GのHSDPA規格による「モバイルデータ通信サービス」の導入が進んだ。定額を含む多様な料金制度の導入とネットワークの高速化、エリアの拡大が進み、同市場は急拡大した。特に2008年以降に起こったNetbookとデータ通信端末のセット販売の成功や米AppleのiPhoneの人気は、同市場の拡大に大きく貢献した。
モバイルデータ通信サービスの2009年の市場規模は760万(利用者数ベース)と推定される。端末別ユーザー数ではデータ通信端末が全体の約6割(推定)を占め、スマートフォンが約4割となっている。データ通信モジュールを内蔵したPCが市場に出始めたものの、2009年度の段階では少数にとどまっている。今後は3GモジュールやWiMAX内蔵のモバイルPCの製品数が増え、構成比は上昇するとみられる。
2009年の国内スマートフォンの出荷台数は194万5000台で、2008年実績(136万台)に対して43%増加した。メーカー別ではAppleが130万台、HTCが28万5000台、シャープが18万台となっている。
2009年はiPhoneが市場を席巻し、スマートフォン市場において66.8%のシェアを獲得した。Appleは端末やサービス(コンテンツ)流通の仕組み作りに特化し、ネットワークと販売を提携先の通信事業者に任せたことで、販売開始から短期間で高度に成熟したエコシステム(生態系)を世界中に構築して成功した。またiPodを段階的に発展させるなど、消費者をうまく誘導するブランド戦略も秀でている。
HTCは各携帯電話事業者にスマートフォンを供給したことに加え、競合他社に先駆けてWindows Mobile、Android端末を導入し、一定のシェアを獲得した。特に2008年秋に発売された「Touch Diamond」はデザイン性を盛り込んだスマートフォンであり、HTCの高い技術力と製品開発力を証明した製品だった。結果として、Touch Diamondは、HTCによる初のAndroid搭載端末の市場投入を成功に導いた。
国内のスマートフォン市場をけん引してきたシャープは、最大の供給先であるウィルコムの影響を受けた。PHSの競争力低下と歩調を合わせるかのように、スマートフォンの出荷が急減した。
国内で販売されるスマートフォンの製品数は、海外市場より少ないのが実情である。国内市場では通信事業者へのOEM供給が主体であることに加え、端末の認証・接続試験などの問題もあるからだ。iPhoneを除いた1機種当たりの販売台数は決して多くなく、既存の携帯電話とは大きな隔たりがある。
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