勢いを増すスマートフォン市場――iPhone、Androidに存在感アナリストの視点(3/3 ページ)

» 2010年06月09日 08時00分 公開
[賀川勝(矢野経済研究所) ,ITmedia]
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拡大が期待されるスマートフォン

 こうした中、期待を集めるスマートフォンがある。KDDIが市場投入を予定している「ISシリーズ」である。シャープ製のAndroid端末「IS01」はワンセグ、赤外線通信機能を搭載している。

 またKDDIは、Android向け専用ポータル「au one Market」を開設し、同社が選んだアプリケーションをポータル上に整備していく。au携帯電話で人気の「au one ナビウォーク」「LISMO!」やau携帯電話のメール機能(8月を予定)も移植するとし、おサイフケータイへの対応も発表している。これは、競合他社より一歩進んだサービスの提供につながる。

 Androidに代表されるオープンプラットフォームは構造上、モバイルインターネットサービス構築時に見られた通信事業者やメーカーの独自性を打ち出しにくい。しかし今後は、KDDIが実践したように、競合他社も国内メーカーが開発したスマートフォンや携帯電話向けに開発されたサービスをスマートフォンに移植する動きが出てくるとみられる。

 中期的にはスマートフォン市場の拡大に合わせて、トラフィックの急増が見込まれる。通信事業者はネットワークのさらなる高速化や収容力拡大に向けた設備投資が必要となる。

 Wi-Fiの活用も海外市場で広がっている。ソフトバンクモバイル以外の事業者による併用の可能性も否定できない。2010年冬季にNTTドコモがLTE(Super3G)の導入を計画しており、他事業者は既存システムの高速化とLTE導入を並行させていくと推察される。

 今後、スマートフォンの普及が進むことで、既存の携帯電話もオープンプラットフォームとの統合を模索する動きが本格化していく。海外市場では、ハイエンドからミドルエンドの携帯電話がスマートフォンに置き換わりつつある。通話用途のみで携帯電話を使っていた消費者は、スマートフォンでインターネットや電子メールを利用し始めている。日本市場でも、モバイルインターネットサービスからインターネットに利用がシフトしていく見通しだ。

サービス名称 ドコモマーケット au one Market
事業者 NTTドコモ KDDI
導入 2010年4月 2010年6月
対応OS Android Android
対応製品(2010年5月現在) 2機種 1機種
対応コンテンツ(スタート時) 約100 約200
月額利用料金 無料 無料。ただし「IS NET」(月額315円)の加入が必要
決済(課金代行) 2010年度導入予定 auかんたん決済(2010年8月以降導入予定)
独自アプリ 「au one ナビウォーク」「LISMO!」「セカイカメラ」など
通信事業者が運営するアプリケーションストア(矢野経済研究所作成)

競合市場

 5月28日に発売された「iPad」は、初回出荷分は予約分で完売するほどの人気だった。iPadは報じるメディアによって、電子書籍端末、タブレットPC、Netbookなどの製品に分類されている。競合製品の最有力としては、MID(モバイルインターネット端末)/スマートブックが挙げられる。

 MIDは主にMeeGo、AndroidおよびChrome OSにIntel製チップセットと3Gモジュールを組み合わせるものだ。スマートブックはAndroidおよびChrome OSとQualcomm製チップセットを採用する製品である。ともに7型前後のスクリーンサイズを想定しており、iPadよりも小型だ。

 MID/スマートブックがスマートフォンと異なる点は、通話機能がIP電話に依存する可能性が高いことだ。また端末の処理能力を高め、スクリーンサイズを大きくするなど、スマートフォンとNetbookの中間を狙った製品を志向している。だが、モバイル環境下でインターネットに接続できる端末という点では、スマートフォンとも競合する。

 国内市場におけるiPadの初期需要は、iPhone所有者の買い増しになると想定される。当面は、2台目需要を開拓する端末として、スマートフォン、MID/スマートブックと競合する。消費者の選定基準は、用途やライフスタイルが大きく影響すると考えられるが、一番大きな市場を獲得するのは、価格と可搬性で最も有利なスマートフォンであると予測される。

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