ミラクル・リナックス、AtomベースのSTBでデジタルサイネージ市場に進出

ミラクル・リナックスは、AtomベースながらフルHD動画の再生も苦にしないデジタルサイネージ専用STB「MIRACLE VISUAL STATION」の提供を開始した。従来のSTBの3分の1の価格を設定し、組み込み分野における足がかりとしたい考えだ。

» 2010年07月12日 15時41分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 ミラクル・リナックスは7月10日、デジタルサイネージ専用STB「MIRACLE VISUAL STATION」の提供を開始した。

 MIRACLE VISUAL STATIONは、産業用PCベンダーのネクスコムと協力して開発したもので、同社の組み込みLinux OS「Embedded MIRACLE」をベースに、デジタルサイネージで必要とされるアプリケーションまで含めた形で提供するデジタルサイネージ専用STB。ディスプレイ一体型のSTBモデルも加えると、5モデルが用意されている。

児玉氏 組み込み市場におけるAtomプロセッサベースのソリューション拡大に期待を寄せるミラクル・リナックスの児玉崇代表取締役社長最高経営責任者。手にはMIRACLE VISUAL STATIONが。MIRACLE VISUAL STATIONは、何か問題が発生したときに自動的に復旧する仕組みなども備える

 同社は、組み込み市場の難しさについて、「アプリケーション、OS、ハードウェアというそれぞれのレイヤーで異なるベンダーから調達しており、そのすり合わせに負荷が掛かっている」と説明、ハードウェアベンダーのネクスコムと密に連係し、特定のセグメントに対して必要なアプリまで搭載・チューニングした形で提供することで、顧客の開発コスト削減、あるいは開発期間の短縮につなげようというのが、組み込み分野における同社の戦略だ。

 MIRACLE VISUAL STATIONに搭載されているCPUが比較的非力なIntel Atomプロセッサ(一部Intel Core 2 Duoモデルあり)。しかし、H.264形式のフルHD(1080p)動画の再生時でも負荷率を10%程度に抑えるなど、チューニングによってハードウェアの性能を従来の高機能モデルに近づけつつ、価格帯を従来の3分の1程度に設定することで競争優位性を確保している。最も安価なモデル「120A」の価格は、7万9800円。コンテンツ制作のためのソフトウェアとして「EMPopMaker」も用意している

 スタンドアロン型のデジタルサイネージでは、主にSTB単体の価格性能比を売りにするが、より大きなビジネスが見込める複数拠点配信型のデジタルサイネージ分野では、デジタルサイネージへのコンテンツ作成・配信サービス「デジサイン」を手がけるサイバーステーションと提携する。サイバーステーションのデジサインは、NTTグループが提供するデジタルサイネージサービス「ひかりサイネージ」との連携でビジネスを拡大しており、そこにMIRACLE VISUAL STATIONが採用されていくことが期待できるが、ミラクル・リナックスは、ハイエンドSTBとしてMIRACLE VISUAL STATIONを提供するだけでなく、廉価版のSTBに搭載するEmbeded MIRACLEの開発・提供も視野に入れるとしている。

 また、Embeded MIRACLEに拘泥するのではなく、技術力を生かしてMeeGoやAndroidなどLinuxベースのプラットフォームも手がける柔軟さを示しており、かつてのOSディストリビューターからソリューションベンダーへの転身を図っている。

 ミラクル・リナックスは、今後の事業領域について、MIRACLE VISUAL STATIONなどの組み込みシステムソリューションと、Zabbixなどに代表される商用代替OSSソリューションへの注力を明らかにしており、2013年度には、組み込みシステムソリューションを同社の収益の柱にしたい考え。

 なお、7月5日には、Asianuxコンソーシアムに、スリランカのEnterprise Technologyが参加したことが明らかにされた。同コンソーシアムには、ミラクル・リナックスのほか、中国のRed Flag Software、韓国のHANCOM、ベトナムのVietSoftware、タイのWTECなどが参加しており、Enterprise Technologyは6番目の加入メンバーとなる。この枠組みをうまく使いながら、アジアに販路を拡大できるかも注目される。

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