ポジティブさの効用を科学する〜『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』マネジャーに贈るこの一冊(1/3 ページ)

自己肯定的な心の状態を保ち良い感情を生み出す好循環を形成できたら、ものごとはうまくいく。「ポジティブ心理学」の観点から、ポジティブな感情の効能を考えましょう。

» 2010年08月28日 11時00分 公開
[堀内浩二,ITmedia]

 ポジティブな感情が、ただ楽しいと感じることをはるかに超えた、もっと奥深い目的をもつことを私に教えてくれたのは、ミシガン大学助教授のバーバラ・フレデリクソンだった。最初に彼女の論文に目を通したとき、私は一気に階段を駆け上がり、興奮して妻のマンディに言った。

 「人生を変えるものにめぐり会ったよ!」

マーティン・セリグマン『世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生』(アスペクト、2004年)

 人は、ポジティブな気分のときの方が、創造性を発揮できる――経験的にはもっともだと思えることですが、感情と知的能力の関係に関する研究の歴史は、意外に新しいものです。特にポジティブな感情についての研究が盛り上がってきたのは1990年末だと思います。今回紹介する『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(日本実業出版社、著:バーバラ・フレドリクソン、監修:植木理恵、翻訳:高橋由紀子)の著者バーバラ・フレドリクソン教授は、この分野での研究の第一人者です。冒頭の一文は、著者の研究の反響を「学習性無力感」の研究で知られるマーティン・セリグマン教授の著書から紹介したものです(この本では「フレデリクソン」と表記されています)。

 セリグマン教授が読んだのは、後に「拡張−形成理論」と呼ばれるようになるポジティブな感情の役割についての論文で、おそらく1998年のものと思われます。このころ、セリグマン教授はアメリカ心理学会の会長でした。その教授を興奮させた著者の説がどのようなものであったか、引き続き同書から引用します。

 フレデリクソンの説は、ポジティブな感情は、進化における遠大な目的をもっているというものだった。ポジティブな感情は、人びとの知性を磨き、身体能力を培い、危機に直面したときには勇気をふるい起こさせる。ポジティブな気分でいるときには、いつも以上に他者をいとおしみ、友情や愛情やお互いの絆もさらに強固になる。そして、新しい考えや教えを受けいれる柔軟性がもてる。

 彼女は、シンプルだが説得力のある実例を示して、この画期的な理論を立証した。

(同上)

 その後、セリグマン教授自身も研究テーマを切り替え、ポジティブ心理学の開拓者の代表的人物として知られるようになります。

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