スマートメーターの導入率が100%を達成したスウェーデンでは、スマートグリッドを国家戦略として推進しています。同国の取り組みをオルタナティブ・ブロガーの鈴木逸平氏が紹介します。
(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「鈴木いっぺいの北米IT事情:雲の向こうに何が見えるか?」からの転載です。エントリーはこちら。)
イタリア、フランスなど欧州でのスマートグリッドは、北米とは異なり、国家レベルの指導で着々と進められているという印象が強い。特にスマートグリッドは、複数の業界が協力し合わなければいけないプロジェクトになるケースが多いため、国の指導を通して、業界間の調整を行いながらプロジェクトを進める方法が一番適していると言える。
スウェーデンでは、その指導力がうまく機能して、国内のスマートメーターの実装率が100%を達成したということが発表された。さらに、この設置されたスマートメーターを利用して、各家庭から電力の消費状況を詳細に収集し、この情報をベースにデマンドレスポンスのシステムを大々的に導入することを計画している。
もう1つスウェーデンが進めている国家的な戦略は、2020年までに30テラワット/時間(TW/h)の風力発電インフラを構築することである。スウェーデンの国家組織である「Energy Market Inspectorate」(EMI)によると、風力発電を国土に広く設置し、普及させた上でスマートメーターによる電力の最適化された供給方式を徹底させることが最良の策であると主張している。
現時点においては、スマートメーターの設置もかなり徹底しており、通信インフラの整備もでき上がっている。あとは、電力料金の変動も含めたデマンドレスポンスのシステムを導入するための法整備を待つのみという状況とされている。デマンドレスポンスを効果的に導入させるためには、少なくともスマートメーターから収集データは1時間に1回の頻度で行う必要がある。
スウェーデンのMalardalen大学「School of Sustainable Development of Society and Technology」で行われた調査によると、スマートメーターを設置した100軒の家庭で実証試験を行い、スマートメーターの発信した電力消費情報を参照できた家庭では、かなりの節電――特に電気ヒーターの大幅な節電――が実施されているという結果が出ている。
このような効果が明らかに出ている状況において、EMIは今年の後半にはメーター情報を1時間単位で読み取るシステムを全国レベルで導入展開する計画を発表している。
スウェーデンのこのスマートグリッドのプロジェクトが着々と進められている理由には、次の要点でまとめられている。
日本は、スェーデンのような統括的な動きを通してスマートグリッドの推進ができる数少ない国の1つではないかと思う。こういった成功事例を大いに参考にして、日本型のスマートグリッドの早期展開を期待したいものである。
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