VMwareのキーノートスピーチに象徴される、VMwareとMicrosoftの対抗状態オルタナティブ・ブロガーの視点

VMwareのカンファレンス「VMworld」では、ポール・マリッツCEOがMicrosoftに対するメッセージを発した。オルタナ・ブロガーの鈴木逸平氏は、マリッツ氏の言葉からVMwareの狙いを探っている。

» 2010年09月02日 16時54分 公開
[鈴木逸平,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「鈴木いっぺいの北米IT事情:雲の向こうに何が見えるか?」からの転載です。エントリーはこちら。)

 今週はサンフランシスコを会場にVMworldが開催され、多数のベンダーと大勢のユーザーが仮想化技術のイベントを見に来ている。

 VM(仮想マシン)を新しいOSの登場と見たり、クラウドを支える基盤技術と見たり、その位置付けはさまざまであるが、規模の大きいカンファレンスが昔のITバブル時期と比較して非常に少なくなってしまった今、こういったイベントの大きさに改めて感心してしまう。

 イベント開催中は、仮想化技術、クラウド技術関連の発表が多く行われ、また、OracleやMicrosoftなどの大手の競合企業などの反応も非常に興味深いものであった。

 イベントのスタートは、CEOのポール・マリッツ氏の登場である。

 VMwareの好調な成長に加え、新しい技術開発に伴う製品発表を行う中、マリッツ氏の発言にはMicrosoftを相当意識した言動が多く――敵対視しているわけではないが――時代の変遷とともにMicrosoftが独占していたOS中心の時代が終わりに近づいているという主張が目立ったようだ。

 下記がその主張の一部である。

"The point is not that quote-unquote operating systems are going to disappear," Maritz said. "It's the point about where innovation is occurring. Traditional operating systems did two things. They coordinated the hardware and they provided services to applications. The innovation in how hardware is coordinated today and the innovation in how services are provided to applications is no longer happening inside the operating system."

 「OSが消えてなくなるということを言っているわけではない。イノベーションがどこのレイヤで行われているのかというのが重要なポイントである。従来のOSは2つの機能を持っていた。1つはハードウェアを統合すること、2つ目はそれをサービスという形でアプリケーションに提供していったということだ。今日この2つの機能の発展は、もはやOSのレイヤでは行われていないという。」

 Microsoftはこのイベントと同期して、USA Todayという新聞に全面広告を出し、VMwareのライセンス事業は「Lock-Inの戦略」であると指摘した。「ユーザーにVMwareの提供する3年間のライセンス契約を締結すべきではない」と主張しているVMwareユーザー向けのレター形式の広告だ。

 これに対してマリッツ氏は、下記のように述べている。

"First of all, I think it's a very sincere form of flattery the fact that Microsoft needs to take out a full page ad in a national newspaper for our customer event," Maritz said. "For Microsoft to talk about lock-in is a severe case of the pot calling the kettle black. I smiled when I saw that this morning."

 「まず、Microsoftがわざわざ全面広告を出すほど、VMwareを評価してくれることには基本的に感謝したい。しかしながら、Microsoftが自分以外の会社に対して“Lock-In戦略”を指摘するのは甚だ矛盾する話であると苦笑せざるを得ない。」

"There really hasn't been a lot of innovation inside operating systems for 20 years now,"

 「OSの中というものは過去20年間、さしたる成長があったとは言えない。」マリッツ氏は10年前まではMicrosoftのWindows 95、Windows 2000の開発責任者でもあったので、この発言は自分が寄与した分も含めて語っているのか非常に興味深い。

 マリッツ氏はVMwareのCEOとして2年前に同社に参画した。VMwareの親会社のEMCが元創業者、ダイアン・グリーン氏を追放した時期にマリッツ氏が登用され、さらにVMwareのCEOとして採用された。Hyper-Vを開発したMicrosoftからの競合関係が激しくなってきた時期の対策であることは良く知られている。

 もう1つマリッツ氏がWindowsの衰退を主張する理由は、Windows以外のOSでのシステム(具体的にはApple製品)が多く登場し始めており、それに対抗できていないという点である。

 VMwareは、過去にMicrosoftが独占していたハードウェアの統合とアプリケーションサービスの提供の役割を自社のソリューションで独占しようという戦略を明確に打ち出しており、最近の事業戦略、また、今後の買収戦略などもこの方針に基づいて進められると想定される。

 「Project Horizon」は、VMwareの仮想化技術とパートナー企業の提供するサービスを組み合わせ、デスクトップでの市場の確保を狙うものである。

 また、今週の火曜日に発表したTriCipherの買収は、このインフラ上にシングルサインオンの機能を提供することでセキュリティを高める具体的な動きである。

 最後に、

"We long since ceased to be a hypervisor company. If you want a hypervisor for free we have one. A couple hundred thousand people a year download our hypervisor. We no longer make our money from the hypervisor. We make our money from data center automation."

 「もう既にVMwareは、ハイパーバイザーの会社ではない。ハイパーバイザーは以前から無償で配布をしている。1年間にこの無償のハイパーバイザーは数千万件もダウンロードされているため、そこはまったくもって収益源ではない。我々はデータセンターの自動化を通して収益を上げる会社である」

変更履歴……初出時に「Window 2000」とありましたが、正しくは「Windows 2000」です。またタイトルが「VMwareのキーノートスピート」とありましたが「VMwareのキーノートスピーチ」です。お詫びして訂正いたします。(2010/9/3 19:40)

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