既にIFEZにおけるS+CCの取り組みはスタートしており、現地に暮らす人々の生活にも浸透し始めている。このたび訪れたソンド地区の中心部にある高級マンション63階の邸宅では、あらゆる部屋にテレプレゼンスシステム(ビデオ会議システム)が導入されており、自宅のTVモニタから遠隔地の医師と面談したり、外国語教師に個人レッスンを受けたり、公共サービスを利用したりできる住環境が整っていたほか、iPhoneやiPadといったモバイル端末を用いて全室の電力管理やセキュリティ管理を行えた。デモンストレーションでは、iPadを使ってエアコンの温度調整や照明のオン/オフ、音楽ステレオの再生などを見ることができた。「寝室のベッドから一歩も動くことなく、ボタン1つでリビングのエアコン操作やトイレの消灯などが可能になる」とマニッシュ・ケトラパル氏(CiscoのEnterprise Asia Operationsディレクター)は説明する。
なぜこうしたことが実現できるのか。裏側の仕組みとして、家電や照明器具、セキュリティ機器など邸宅に存在するさまざまなものがIPネットワークでつながっているため、モバイル端末からでもインターネット経由で操作、管理できるというわけだ。ケトラパル氏は「S+CCはオープンIP技術を採用したクラウドベースのサービスなので、デバイスに依存することもなく、容易に導入できる」と語る。
さらに驚くべきことは、邸宅のドアや窓、天井に備え付けられているセンサが室内外の温度や照明のエネルギーを感知し、部屋が適温になるようエアコンを自動コントロールしたり、人がいない場所の照明を自動で消したりできる。
これらのシステムはマンションの設備、サービスとしてデフォルトで組み込まれているため、S+CCを実現するマンションは通常のものよりも価格は高いというが、「効率的なエネルギー管理がなされるため消費電力コストを削減でき、結果的にトータルコストは下がる」とケトラパル氏は強調する。実際、初期コストは決して安くないにもかかわらず、入居希望者が殺到したという。
ソンド地区で9月に開校したばかりのインターナショナルスクールでも、S+CCを体現する取り組みが見られる。同校ではビデオ会議システムやPCを活用した遠隔教育を1つの特徴としており、生徒は学内にいる教師だけでなく、提携する海外の学校の教師からも授業を受けることができる。加えて、他校の生徒とも共同授業を展開したり、リアルタイムでディスカッションやグループワークを実施したりすることが可能になる。
「ビデオ会議システムを活用することで、生徒たちは国内外問わずさまざまな人たちと幅広いコラボレーションができるのだ」と同校のある教師は胸を張る。
ところで、IFEZにおけるこうした取り組みは韓国国内での注目は高いのか。関係者によると、IFEZに関する情報は定期的に新聞やTVニュースなどで報道されており、国民からの関心も高まっているという。政府も優遇制度を設けて外資企業や外国人居住者を誘致するなど、IFEZの成功に向けて積極的な姿勢を見せている。
IFEZのように、一から建造物やインフラを構築できる新興都市にとって、S+CCとの親和性は非常に高いと、Global Center for S+CCでCTO(最高技術責任者)を務めるジョン・ベッケルマンズ氏は述べる。
「(ネットワークインフラが整備されるなど)既に都市が完成しているヨーロッパや米国と異なり、韓国や日本にはまだまだ発展の余地がある。S+CCを実現すれば大きなアドバンテージとなるはずだ」(ベッケルマンズ氏)
仁川で2014年に開催されるアジア競技大会は、同地域の経済的、文化的発展に向けた大きな起爆剤となるであろう。アジア発の未来都市のモデルケースとして、仁川の今後の動向に熱い視線が寄せられているのだ。
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