CIOが納得するBlackBerryを目指す――RIMのCEOが表明

Research In MotionのラザリディスCEOが来日し、NTTドコモとともに企業ユーザーを対象にしたBlackBerryの戦略を明らかにした。

» 2010年11月18日 18時22分 公開
[國谷武史,ITmedia]
マイク・ラザリディス社長兼共同CEO

 スマートフォン「BlackBerry」を手掛けるカナダのResearch In Motion(RIM)の日本法人は11月18日、ユーザーカンファレンス「BlackBerry day 2010」を都内で開催した。RIMの社長兼共同CEOのマイク・ラザリディス氏が来日。BlackBerryの国内販売を手掛けるNTTドコモとともにBlackBerryの戦略を紹介した。

 世界の携帯電話市場で販売台数が急増しているスマートフォンだが、AppleのiPhoneやGoogleのAndroid、NokiaのSymbian、RIMのBlackBerryが激しいシェア争いを繰り広げる。MicrosoftもWindows Phoneで巻き返しを図ろうしてしている状況だ。

 この中でBlackBerryは、企業をはじめとする数多くのビジネスユーザーを獲得している点が大きな特徴である。基調講演に登壇したラザリディス氏は、ワイヤレス技術で電子メールをどこでも送受信できることを目指した同社の生い立ちを紹介し、BlackBerryが企業ビジネスの活性化を支援するITのソリューションであることを強調した。講演では、ビジネスプロセスの改革をテーマに同社の戦略を紹介した。

 BlackBerryは、メールを中心としたメッセージング分野からスタートしたが、ビジネスユーザーの要望に応じていく中で、ビジネスプロセスを改善する手段としての立場を確立していったという。RIMは携帯電話事業者だけでなく、IBMやSAP、Oracle、Microsoftといった主要なITベンダー各社とパートナー関係を構築しており、ERPやCRM、SFAなどの基幹業務システムの情報をユーザーはいつでもBlackBerry上で利用することができる。

 ビジネスシーンでの利用には、情報をいかに活用するかという点と同時にセキュリティやコストも重視される。同社では認証や暗号化によって、端末からネットワーク、企業内システムまでをエンド・トゥー・エンドでデータを保護する仕組みを実現する。また、データの圧縮技術にも強みがあるとし、ネットワークに負荷を掛けることなく、データを効率的に伝送できる。これにより、ユーザーの通信コストの抑制に貢献するという。

BlackBerryを内線端末として利用するソリューション(左)。大画面で多くの情報を表示できるPlayBookはセキュリティ機能を標準で備える

 ビジネスユーザーにユビキタスな業務環境の提供を目指すという同社の取り組みは、15年近いものになる。ラザリディス氏は「携帯電話の世界でできることはほぼ実現した」と話し、次なる展開として9月に米国で発表したタブレット端末「PlayBook」を取り上げた。スマートフォンではディスプレイのサイズを最大でも4インチ程度にすることが限界であり、より情報を活用したいとするユーザーの要望に応えるには、タブレット型が適しているという。

 PlayBookは、7インチサイズのディスプレイを搭載し、スマートフォンよりも多くの情報を1つの画面で提供することを目指したものである。AdobeのFlashやAIR、HTML 5をサポートするなど、リッチインターネットアプリケーションにも対応したクライアント端末という位置付けだ。タブレット端末に参入する同社の動きは、一見すると、モバイル市場で注目を集めるAppleのiPadを追従したかのように映る。だがラザリディス氏は、PlayBookがビジネスユーザーの生産性向上につながる新たなデバイスであることを強調した。

 PlayBookは、BlackBerryで扱えるアプリケーションや情報のほとんどをそのまま利用でき、スマートフォン型端末とデータを共有できる。その際には暗号化通信に対応したBluetooth接続で同期を行う。Bluetoothによる通信が一種の認証機能の役割を果たし、通信が成功しなければデータを共有できない。PlayBook単体で扱える業務データを制限することで、ビジネスユーザーが懸念するセキュリティリスクに対処している。

 ラザリディス氏は、「セキュリティの確保と社員の生産性向上を両立したいとするCIOや情報システム部門が納得するデバイスを目指した」と述べている。

企業向け展開を加速するNTTドコモ

 NTTドコモ 取締役常務執行役員の大嶋明男氏は、12月から展開するBlackBerryユーザーの拡大を狙う新製品やサービスなどの取り組みを紹介した。

 まず新機種では、12月に米国で人気を集めている「BlackBerry Curve 9300」を発売する。現行の「BlackBerry Bold 9700」はハイエンドモデルに位置付けられ、企業の経営層や幹部社員の利用を狙ったものだが、新機種はユーザーのすそ野を広げるためのミッドレンジモデルになる。

 料金面では、企業向けの接続サービス「ブラックベリー エンタープライズ サービス」の月額料金を595円、個人向け接続サービス「ブラックベリー インターネット サービス」の月額料金を1085円それぞれ値下げする。またiモードのメールアドレスを利用できる「SPモード」をBlackBerry向けにも提供するほか、有害サイトへのアクセスを遮断するフィルタリングサービスを提供する。

イベントにはBlackBerry向けのサービスや製品も紹介された。サイボウズはグループウェア「サイボウズ Office」や「ガルーン」のスケジュール、メール機能が利用できる専用アプリを無償提供する。来春には承認や会議室予約などを可能にした機能強化版を有償で提供する計画だ

 大嶋氏によれば、スマートフォンは同社が予想していた以上の普及ペースを見せているという。「携帯電話は持ち歩ける究極のITツールであり、どこでもリアルタイムに情報を活用したいユーザーに応えたい」と話している。

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