社運を賭けた広告配信システムの開発――品質管理の徹底が鍵に(2/2 ページ)

» 2011年01月19日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
前のページへ 1|2       

品質に対する厳しい条件

 新システムの開発プロジェクトは、iMenu サーチの導入と合わせて2009年10月に始動した。通信サービスを担うためNTTドコモから提示されたシステムのサービスレベルは非常に厳しいものであった。1秒当たり数千件のリクエストを処理(キーワードに対応した広告データの照会や広告データの配信)でき、遅延は数ミリ秒以内であること、また、稼働率は限りなく100%に近いものである。

 1年後の本格運用までにサービスレベルを達成したシステムを完成させる必要から、D2Cではプロジェクト管理を重視した。企業の基幹システム開発のプロジェクト管理で実績のあったウルシステムズをパートナーに選定。ウルシステムズは発注側としてプロジェクトに参加し、開発ベンダーの品質を管理する役割を担当した。

 ウルシステムズ 事業開発部 部長代理の横山芳成氏は、数値や成果物だけでの品質管理は不十分と考え、和賀氏らとともに開発ベンダーが作成した基本設計書をすべて読み込み、機能の1つ1つをすべての開発ベンダーに確認する作業から着手した。

 システム規模は利用ロール数が約20、画面数が約200、帳票数が約10、配信機能数が約20、バッチ数が約60というもので、サーバラックの数は10本以上になる。プロジェクトのうち最大のテスト工程は、単体で約3万項目、結合で約1万5000項目、総合で約5000シナリオのテストが行われ、300人以上が参加した。横山氏は独自に品質検証チームも組織して、ベンダーによるテストが完了しない段階から受け入れテストを実施し、開発ベンダーと共同で不具合改修などの作業に当たった。

 このほかにも、プロジェクトに参加するメンバーの理解を深める目的で、システムの機能や仕組み、検索連動型広告のビジネスなどを解説するオリエンテーションを6回開催した。問題解決に必要なスキルをチーム単位で確保するために、各メンバーのスキルチェックを行い、体制の組み替えも実施。必要に応じてメンバーのスキル向上のための研修も行ったという。

品質管理を指揮したウルシステムズの横山氏、D2Cの和賀氏と沢井氏(左から)

 2次統合テストやパフォーマンスチューニングを行うフェーズに入った2010年7月以降、横山氏と和賀氏、D2C 事業開発本部 エキスパートの沢井拓氏が通常の業務時間の後に現場に常駐して、開発側との調整に当たった。2010年9月に全てのテストが完了し、10月1日に本格運用を開始した。


 開発プロジェクトでは、発注側がある程度の要件を提示した後は開発側に任せ切りにしてしまうケースが少なくない。その結果、品質が発注側の要件を満たさないものであったり、納期に遅れが発生したりする事態が起きてしまうことがある。

 今回のプロジェクトについて、横山氏は「すべての基本設計書に目を通して仕様を覚え、開発側とスムーズにやりとりができるように努めた」と話し、発注側が積極的に品質管理に取り組んだことが目標達成につながったと語っている。

企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ