プライベートクラウド:社内課金の工夫で最適化推進TechNetブロガーの視点

社内で課金をするということはどういうことか。課金という手法を使って利用を促したり、制御したりするにはどうしたらよいか。プライベートクラウドで実現する課金インフラの仕組み。

» 2011年03月04日 14時00分 公開
[高添修(マイクロソフト),ITmedia]

(このコンテンツはTechNet Blog「高添はここにいます」からの転載です。エントリーはこちら。なお、記事内容はすべて筆者の個人的な見解であり、筆者が勤務する企業の立場、戦略、意見等を代表するものではありません)

 これまで、プライベートクラウドの4つの要素について書いてきましたが、課金についても触れておきましょう。

 ITに関する予算をIT部門がすべて握っている場合には、社内課金を意識する必要はないかもしれません。

 ただ、利用者部門にITに関する予算が振り分けられていたり、IT予算という名目ではなくても部門で勝手にIT導入を進めてしまうような状況の企業では、IT部門が用意したリソースをサービスとして利用してもらうことでITに関する予算の流れを制御することができます。

 「制御する」と書くとIT部門が主導権を握れるようにも思えるかもしれませんが、同時に「サービスは利用されなければ意味がない」というプレッシャーもIT部門が背負うことになります。

 この構図が「社内だから」という甘えから脱却し、企業として準備した予算が適切に使われるきっかけになればよいとも言えます。

 今回の投稿も、課金について考えるきっかけになればうれしいです。

 さて、課金と一言で言っても、使った分だけ支払う従量課金、最初から決められた金額を支払う定額課金、課金および請求の期間(毎月・四半期・半期・年額)、グローバルな企業であれば基軸通貨など、いろいろとあります。

 しかし、プライベートクラウドの場合、パブリックなクラウドで行われている従量課金(使った分だけ課金)が向いているとは限りませんし、サービスそのものを自社内で運用していくことを考えると、シンプルで誰が見ても分かりやすい定額課金は、利用者・提供者双方にメリットがありそうです。

 例えば、

  • 仮想マシン1台 5000円/月
  • チーム用のポータル1つ 1万円/月
  • チーム開発用のサービス1人分 3000円/月

といった具台です。

 ただし、ここでの課題は、プライベートクラウドの場合、潤沢にリソースがあるわけではないということです。

 会社の予算で購入(準備)したリソースを最大限有効活用するためには、シンプルさにこだわり過ぎるのも問題があります。

 そこで、どのような工夫ができるかを考えてみましょう。

 まず、利用申請時に「いつまで使うか?」という情報を入手することが重要です。

 サービスですから、利用者主導であることは間違いないのですが、リソースがいつ頃に使われなくなるのか? を知っておくわけです。

 その情報さえあれば、タイミングが来たら強制的にリソースを引き上げることもできますし、そこまでしなかったとしても継続的に使う予定があるかを事前に確認することもできます。

 これで、利用者のための柔軟で迅速なサービスを担保しつつも、無駄な投資を抑えることができるようになる可能性を作るのです。

 そしてもう1つが課金による制御です。

 ちなみに、私がプライベートクラウドの課金について考えるようになったのは、SCVMM Self-Service 2.0(SSP 2.0)がきっかけです。

 なぜかというと、SSP 2.0は「いつまで使うか」という情報を利用者に入力してもらう仕組みに加えて、課金にもちょっとした工夫がされているからです。

 具体的なお話をしましょう。

 SSP 2.0の場合、利用者は仮想マシンの数を申請しません。

 あくまでも申請をするのは、メモリとストレージ容量です。

 例えば、「プロジェクトAの開発用に、メモリ32GB、ストレージ500GBを、来年3月末まで使いたい」という申請(予約)をするのです。

 データセンター管理者はそれに見合うリソースを用意して承諾し、使ってよい仮想マシンテンプレート(ロースペック、スタンダード、ハイスペックなど)を共有します。

 これで(社内における)利用契約成立というわけです。

 サービスとしての仮想マシンは? というと、

 利用者は申請した容量の中で自由に仮想マシンを作成したり削除したりします。どのような仮想マシンをいくつ作るかは部門に委ねられます。

 この考え方も面白いですね。

 さて、SSP 2.0の課金にはさらに面白い仕掛けがありまして、契約が成立した段階で、利用者には比較的安価な「予約フィー」が発生する仕組みになっています。

 この段階では仮想マシンを作っていないので、「予約フィー」はデータセンター側に準備をしてもらうための予算とでもいいましょうか。

 そして、利用者が実際に仮想マシンを作ると、仮想マシンのスペック(複数用意されたテンプレートからどれを選ぶか)に応じてコストが別途追加されるという仕組みです。

 このように、「安価な予約フィー」と「利用することでの追加課金」の2段階の仕組みというのは利用者と管理者双方のことをよく考えられていて、他では見たことがないので、こういうパターンも知っておいて損はないでしょう。

 実はSSP 2.0の場合と、実際に仮想マシンを使い始めると、その分の予約分のコストを減らせるようにまで考慮されています。

 それをまとめたのがこちらのスライドなので、もし興味があれば見て下さい。

 さて、どうでしょうか?

 今回の投稿では、仮想マシンをサービスとして提供した場合について書きましたが、サービスが変われば違った課金の方法も出てくることでしょう。

 これをきっかけに社内で課金をするということはどういうことか、課金という手法を使って利用を促したり、制御したりするにはどうしたらよいかを考えてみていただければと思います。

 余談ですが、Windows Server 2008 R2 SP1のDynamic Memoryを利用するとしたら、仮想化におけるメモリの管理が固定的ではなくなるので、コスト設定も大きく変わるかもしれませんね。

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