シマンテックは「ノートン モバイル セキュリティ」を発表した。Android向けの統合セキュリティソフトとしては国内初の製品となる。
シマンテックは3月3日、Android OS対応のコンシューマー向け統合セキュリティソフト「ノートン モバイル セキュリティ」を発表した。18日から家電販売店ルートでの販売を開始する。
新製品は端末の盗難・紛失対策、マルウェア対策、不正着信の遮断、セキュリティ機能のシミュレーション機能を搭載する。Android 2.0/2.1/2.2を搭載するNTTドコモおよびソフトバンクモバイルのスマートフォンやタブレット端末に対応。また、KDDI(au)が3月に発売する「SMT-i9100」には体験版がプリインストールされる。auのその他のAndroid製品とイー・モバイル製品での対応は未定。
盗難・紛失対策では、遠隔操作で端末内のデータを消去するリモートワイプや、端末の操作をロックするリモートロック、紛失した端末の所在をGoogle Mapsで確認できるリモート検索、SIMカードが抜かれると自動的に操作がロックされるSIMカードロックの各機能を提供する。リモートワイプとリモートロック、リモート検索を利用する際には、対象端末に同一の携帯電話会社の端末からショートメッセージを送信する必要がある。
マルウェア対策では、端末にアプリケーションをインストールする際やファイルなどをダウンロードする際に、マルウェアのスキャンと駆除を行う。スキャンに使用する定義ファイルは定期的に自動更新される。不正着信の遮断機能では、迷惑電話やショートメッセージを利用したスパムの受信を拒否できる。シミュレーション機能では、各種のセキュリティ機能を利用する場合に端末に与える影響を事前に確認できる。
価格はオープンで、想定実売価格は2980円。1台の端末で1年間利用できる。同ソフトのインストールは、購入したパッケージに同梱されているカードに記載された同社指定のWebサイトに端末でアクセスして行う。インストール時にカードにあるコードを入力すると有効になる。
コンシューマー営業統括本部 日本/韓国担当統括本部長のアンドリュー・ダンバー氏は、「Android向けの統合セキュリティ製品を発売するのは日本では初めて。モバイルセキュリティの市場でいち早くポジションを確立したい」と語った。
1月に開催された米CESや2月にスペインで開催されたMWCでは、数十種類のAndroid製品が発表され、2011年中に世界各地で発売される見込みだ。まるでこれと歩調を合わせるかのように、セキュリティ企業各社からはAndroidを狙ったマルウェアの報告が相次いでいる。
米Symantec プロダクトマーケティングディレクターのコン・マロン氏は、「実数としてはまだ多くはないものの、PC向けのマルウェアと同等の機能を持つマルウェアが登場している事態は脅威だ」と話す。現在までに見つかっているマルウェアは、端末内の個人情報や位置情報、パスワードなどを盗聴して外部サーバに転送するものが多い。
だが最近では、端末の脆弱性を突いてバックドアを仕掛け、不正に操作できるようにするトロイの木馬が出現した。マロン氏によれば、トロイの木馬で端末から大量のスパムを送信できてしまう場合があり、複数の感染端末でボットネットの形成を試みる動きもあるという。
モバイル端末の脅威には、端末の盗難・紛失によって第三者に悪用されてしまう脅威のほかに、不正プログラムやフィッシング詐欺などもある。特に不正プログラムによる脅威では、ユーザーが意図せずに加害者になってしまう可能性も含む。例えば大量のスパムが送信された場合、スパムの送信者として追求されてしまう。ネットワークに多大な負荷をかけたとして、携帯電話会社からサービスを止められる場合があり、その分の膨大な通信料金を請求されてしまうことも想定される。
マロン氏は、既にAndroidにはこうしたリスクがあり、端末の普及ペースを考慮すれば、近いうちに深刻な問題になると見ている。だがモバイル端末に対するユーザーのセキュリティ意識はまだ十分に醸成されているとは言えず、「さまざまな機会を通じて啓発していきたい」と話している。
Android向けのセキュリティ製品自体は、無償のものを含めて数多く存在する。その大半が海外向けだが、国内でも利用できるものも少なくない。Symantecのほかに、McAfeeやTrend Micro、F-Secure、G Data Software、Sophos、AVGなどの主要なセキュリティ企業が多数参入している。製品自体は、マルウェア対策や盗難・紛失対策といった単機能なものから統合版までとさまざまだが、基本機能に大きな差はない状況である。
他社との差別化についてマロン氏は、「確かに基本機能だけならどこも似たようなものだが、ユーザー体験につながる細部の作り込みや、日本語によるサポートといった点で強みを発揮できるだろう」と話す。将来的には、ユーザーが必要とする機能だけを選択できるような製品構成や、メーカーおよび通信事業者によるサービス、Androidマーケットでの提供も検討していくとしている。
変更履歴……初出時に「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TBi11M」とありましたが、正しくは「SMT-i9100」です。お詫びして訂正いたします。
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