いま改めて考える「日本企業のグローバル化」

グローバルビジネスを支えるIT部門とパートナーの役割とは? IT系メディアが議論(1/3 ページ)

企業のグローバルビジネスを支えるITの基盤をどう実現すべきか。国や地域で異なるネットワーク環境や法規制などが壁として立ちはだかるケースも多い。IT部門が自社のグローバルビジネスを成功に導くために果たすべき役割や、それをサポートするパートナーの意義について、IT系メディアによる討論が行われた。

» 2011年10月17日 12時05分 公開
[ITmedia]

 企業のグローバル展開においてITが果たすべき役割とは何か――調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)が主催した「メディア横断討論会」では、IT系メディア4社がこれをテーマに活発な議論を交した。

 企業の持続的な成長にはグローバル化が不可欠とされる。“世界の工場”と称された中国が巨大な消費市場に変貌したように、新興国を中心とした市場でビジネスチャンスが広がりつつある。企業のビジネスを支えるITが、グローバル化で果たす役割も大きい。

 しかし、IT基盤のグローバル展開では多くの難題が浮上する場合が少なくない。進出先で安定した業務システム環境を実現できるか、機密データのセキュリティをどう確保すべきか――これには現地の通信ネットワークの状況や、法規制、コンプライアンスといったさまざま事情が大きく影響する。グローバルビジネスを支えるITをどう実現すべきか。討論会の中から、グローバルビジネスを支えるIT基盤の条件、そしてその実現を担うIT部門やパートナー企業に求められる役割を探る。

photo 左から、朝日インタラクティブ CNET Japan編集長の別井貴志氏、アスキー・メディアワークス TECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ氏、ITR シニア・アナリストの舘野真人氏、アイティメディア ITインダストリー事業部 エグゼクティブプロデューサーの浅井英二氏、日経BP コンピュータネットワーク局 ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサーの星野友彦氏

グローバルビジネスで求められるIT基盤

 「新興国とはいえ、もはや日本や欧米で売れ残った商品を持っていけば売れるという市場ではない」――日経BP コンピュータネットワーク局 ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサーの星野友彦氏は、新興国市場の現状をこのように話す。同氏によれば、日本企業が新興国市場への進出で先行する中国や韓国の企業に負けずにビジネスを展開するには、徹底した在庫管理によって現地の市場ニーズに合わせた商品を展開することが重要となる。

photo 舘野氏

 それを叶えるには、標準化されたシステムを進出先で迅速に構築できるかがカギを握るという。「標準化されたシステムで商品の在庫や売り上げ状況などの数字を世界規模で管理しなければ、どこかの市場で不良在庫の発生といった問題が起きかねない」(星野氏)

 また、モデレーターを務めるITR シニア・アナリストの舘野真人氏は、「進出先で構築するシステムには、現地の人材が使いやすいものであるといった点も求められるのではないか」と提起する。これに対して星野氏は、2005年にASEAN諸国で統一した業務システムを2009年に日本にも導入した花王での取り組みを挙げて、「標準化と言っても、従来のように日本の視点で標準化したシステムを海外で構築するのではなく、世界中で運用できるように標準化したシステムを構築していくべきだ」と語った。

 アイティメディア ITインダストリー事業部 エグゼクティブプロデューサーの浅井英二氏は、「グローバルビジネスを効率的に展開するには、拠点ごとの“横のネットワーク”を作ることも必要」との見解を加えた。企業の経営層とセミナーやディスカッションを行うことが多いという浅井氏は、事例を挙げながら具体的に説明した。

photo 浅井氏

 「建設機械メーカーの小松製作所では、かつて国内で作成した設計部品表を基に、日本がハブとなって世界の拠点で製造を行っていた。この仕組みでは各地で量産する際にタイムラグが発生し、改良を加えた場合も迅速に対応できないという課題があった。同社はこれを解決するために、設計の情報に世界中からアクセスできるデータベースを構築。日米で共同開発を進めたり、各製造拠点で量産を開始するまでの期間を短縮することに成功している」(浅井氏)

 浅井氏によれば小松製作所での取り組みは、一見すると集中による効率化にも映るが、実際には分散化のアプローチであるという。つまり、設計情報のデータベースが世界共通のシステム基盤という役割を果たし、各製造拠点では拠点単位で製造に必要となる情報に転換して量産に入れる体制となっている。こうした仕組みによって、企業はグローバルビジネスを迅速に展開できるようになるという。

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