いま改めて考える「日本企業のグローバル化」

グローバルビジネスを支えるIT部門とパートナーの役割とは? IT系メディアが議論(3/3 ページ)

» 2011年10月17日 12時05分 公開
[ITmedia]
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IT部門に求められる姿、パートナーの役割

 それでは、舘野氏や星野氏が提起したような役割をIT部門が実践しているグローバル企業では、どのような取り組みが行われているのだろうか。浅井氏が米General Electric(GE)の事例を紹介した。 浅井氏によれば、GEでは、情報システム部門の役割を「経営戦略をITに翻訳すること」と定義し、ビジネスプロセスのすべてに関わることを求められており、そのためのリーダー人材育成プログラムも充実しているという。

 「GEには2年間のITリーダー育成プログラムがある。6カ月ごとに世界中の事業部門のプロジェクトを担当させ、その期間内に成果を出させるというもので、次の10年を担うスキルをビジネスの現場で学ぶものだ」(浅井氏)

 GEの事例は、IT部門に求められる役割のモデルケースのひとつになるようだ。だが浅井氏は、GEが積極的に外部パートナーを活用していることも挙げ、パートナーの重要性を指摘する。前述のように進出先での拠点構築の際に人材不足という課題に直面するケースが少なくない。IT部門も例外ではなく、現地でのIT基盤の構築をサポートしてくれるパートナーの存在が不可欠になる。

photo 大谷氏

 この点について大谷氏は、「これまでネットワークは通信事業者に、データセンターは別の事業者に、というように分野ごとに異なるパートナーが支援する仕組みだった。しかしユーザー企業としては、できれば1つのパートナーで多くを支援してくれる方がありがたいと感じている。今後、パートナーには“総合力”が求められてくるのではないか」と述べた。

 グローバルICTパートナーの実力を知るには、進出先の国や地域の数、サポートしている言語の数といった指標が分かりやすいだろう。大谷氏は、そうした数字よりも、実際にどの程度までサポートをしてくれるのかといった“中身”こそが、ユーザー企業にとって重要だと話す。「例えば、進出先が北米と韓国だけだとしても、そこでは非常に手厚いサポートを提供している、現地の状況をよく理解してコンサルティングをしてくれるといったパートナーが大切な存在になるだろう」(大谷氏)

 ユーザー企業がグローバルICTパートナーに求めるのは、進出する国や地域に関する豊富な情報や、そこでの課題を乗り越えるためのノウハウ、それらを活用したサポートであるようだ。

 また星野氏は、このように考えるユーザー企業の中には必ずしもグローバルICTパートナーが日系企業である必要性はないとみる動きが出るかもしれないと予想する。「単にネットワークやデータセンター、クラウドサービスを提供するだけではなく、ユーザー企業のビジネスを変革させてくれるという役割がパートナーには求められるだろう」(星野氏)

 日本企業のグローバル化が今後ますます加速していくとみられている。舘野氏は、IT部門やパートナーが自らの役割を果たしていく上で、日本という枠だけにこだわらず、世界に視野を広げていくことが大切だと語った。


 IT系メディアによる「メディア横断討論会」は10月28日にも開催され、読者も参加できる。今回の内容を踏まえ、企業のグローバル化とITの役割についてより広い視点で議論が尽くされることになるだろう。会場に足を運び、各メディアの“生”の見解をぜひ聞いていただきたい。

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