マネジメント信仰の落とし穴松岡功のThink Management(2/2 ページ)

» 2012年01月26日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]
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マネジメントはビジネスを支える黒子

 このように、日本で経営やプロジェクトをマネジメントする能力に関する論議が本格化したのは2000年代に入ってからだ。筆者もこの論議には大いに興味を持ち、「マネジメントに科学的手法を取り込むべき。そのためにITパワーを活用すべし」と訴求してきた。

 しかし、最近になってこの論議は違う角度からもとらえる必要があると感じている。そう感じたのは、『マネジメント信仰が会社を滅ぼす』(新潮新書)という衝撃的なタイトルの本を読んだのがきっかけだ。著者である経営コンサルタントの深田和範氏は、この本の中でこう述べている。

 「かつての経営者たちは、世間に広まったマネジメント理論や手法に惑わされず、自分の経験・勘・度胸に基づいて意思決定し、それに従って周囲の者を動かしていた。組織の中心には経営者たちの意志があり、そのもとでビジネスが行われていた」

 「ビジネスをするためには資金と労働力を効果的に使わなければならないから、マネジメントが必要になった。この段階では、あくまでもビジネスが主であって、マネジメントはビジネスを効果的に行うための理論や手法という位置づけにあった」

 「ところが、いつの間にかビジネスとマネジメントの関係が逆転した。いつの時代も、どこの世界にも通用する、絶対的なマネジメント理論・手法が存在し、それに基づいてビジネスが行われるべきだと考えられるようになった。そして、経営者たちの経験・勘・度胸に頼って行われるビジネスは非科学的で、時代遅れのものと考えられるようになった」

 「ところが、ビジネスで成功を収めた人の多くは、成功の秘訣を自分の経験・勘・度胸に頼ってきたことという。私たちはもっとシンプルに、経験・勘・度胸を信じて、自分の意志で動いてもよいのではないか」

 そして深田氏は、ビジネスとマネジメントの関係についてこう強調している。

 「マネジメントには付加価値を生み出す力はない。付加価値を生み出すのは、あくまでもビジネスである。つまり、企業活動における主役は、あくまでもビジネスであって、マネジメントはビジネスを支える黒子である」

 まさしくマネジメント信仰の落とし穴を突いた見解である。マネジャーの皆さんには、ぜひ読んでいただきたい一冊である。

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