米Atlantis Computingが開発した仮想デスクトップの高速化技術を活用した「Atlantis ILIO Diskless VDI」を提供する。
ネットワールドと米Atlantis Computingは2月7日、仮想デスクトップイメージ用の共有ストレージなどを使用せずに仮想デスクトップ環境を構築・運用できる製品「Atlantis ILIO Diskless VDI」を3月下旬から提供すると発表した。企業の定型業務などでの採用を見込む。
新製品は、Atlantis Computingが開発した「Atlantis ILIO」というソフトウェアと、これを実行するための仮想化環境(VMware vSphere)で提供。仮想デスクトップ基盤としては、Citrix XenDesktopもしくはVMware Viewを利用でき、これらを稼働させる基盤はCisco SystemsのUnified Computing System(Cisco UCS)を推奨している。
Atlantis Computing マーケティングディレクターのセス・ノックス氏によると、Atlantis ILIOは、仮想デスクトップ環境の起動時間の短縮や処理速度の高速化によって、ストレージを中心とした仮想デスクトップ基盤全体のコストの大幅な削減を実現することを目的に開発した。
Atlantis ILIOではストレージのI/Oを削減するために、サーバのメモリ上にWindows NTFSを展開してI/O処理を行う。さらに、サーバ上で仮想デスクトップのイメージデータの重複排除も実施。これにより、IOPS(1秒当たりに可能なI/O回数)を最大90%、ストレージ容量を90〜99%削減できるという。パフォーマンス面ではWindows 7の仮想デスクトップ環境を平均12秒で起動できるとしている。
「仮想デスクトップ基盤では導入および運用でのコストの多くをストレージが占める。パフォーマンスのボトルネックにもなる。ストレージをいかに減らすかが焦点で、当社にこの実現を理念にしてきた。物理PCよりもはるかに速いユーザー体験も可能にした」とノックス氏は話す。
仮想デスクトップ環境ではその基盤となるサーバで大量のメモリを消費するが、製品の多くが最大で128Gバイト容量までのメモリを搭載できないことから、サーバを増設したり、高性能ストレージを組み合わせたりすることで、パフォーマンスを確保する必要があるとされてきた。Atlantis Computingは、Cisco UCSが拡張技術によって128Gバイト容量の制約を超える512Gバイト容量のメモリを搭載できることから、同サーバでのAtlantis ILIOの利用を念頭に置いた製品開発を手掛けている(Cisco以外のサーバ製品でも利用はできるという)。
ネットワールド マーケティング本部 マーケティング部 ビジネス開発グループ次長の川口朋男氏によれば、Atlantis ILIOを活用した仮想デスクトップ基盤には、物理PCの環境を仮想化してユーザーが独自のアプリケーションを利用できる「パーシステントデスクトップ」と、均一的な仮想デスクトップ環境の提供を前提とした「ノンパーシステントデスクトップ」がある。
パーシステントデスクトップでは仮想デスクトップイメージの共有ストレージが必要になるため、Atlantis ILIOによってパフォーマンスの大幅な向上とストレージの節約によるコスト削減効果が見込まれる。ノンパーシステントデスクトップではパフォーマンスの向上に加え、仮想デスクトップイメージの共有ストレージ自体を不要にすることによるストレージコストの大幅な削減を可能にするという。
「ノンパーシステントデスクトップは、例えば、保険会社が代理店に提供するシステムといった利用が想定される。コスト削減に加え、全てのユーザーに常に最新のシステムを容易に提供できるなどの効果も期待できる」(川口氏)。米国の導入事例では、JP Morgan Chaseが代理店や定型業務の担当者向けに10万台規模の仮想デスクトップ環境をノンパーシステントデスクトップで展開しているとのことだ。
ネットワールドが手掛ける仮想デスクトップの構築案件のうち、現在はパーシステントデスクトップが大半を占めるが、Atlantis ILIO Diskless VDIの提供で半数程度がノンパーシステントデスクトップになると見込んでいる。同社はAtlantis ILIO Diskless VDIを100から1000ユーザー規模で導入する企業向けに提案する。販売は25ユーザー単位で、参考価格は26万2500円(税別)。初年度の4万ユーザーの利用を計画する。
また、仮想デスクトップの構築支援では設計や移行、監視ソリューションの「Liquidware」も組み合わせて提供。Liquidwareは今春のバージョンアップで、ユーザーが仮想デスクトップ環境に個別のアプリケーションをインストールして利用できる機能を提供する予定。ノンパーシステントデスクトップでもパーシステントデスクトップに近い利用形態を実現できるとしている。
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