ビッグデータをインテリジェンスに変えるにはガートナー BI&情報活用 サミット 2012 リポート

BIや情報活用をテーマにしたガートナーのイベントが開催中だ。オープニングキーノートでは、バイスプレジデントの堀内氏が企業が取り組むべきデータ解析の勘所などを解説した。

» 2012年07月13日 07時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

 IT調査会社のガートナー ジャパンは7月12日、13日の日程で、企業のIT部門や経営層に向けた年次イベント「ガートナー ビジネス・インテリジェンス&情報活用 サミット 2012」を都内で開催している。初日の基調講演では、ガートナー リサーチ バイスプレジデントの堀内秀明氏が「ビッグデータ」に対して企業が取り組むべき課題などを語った。

ガートナー リサーチ バイスプレジデントの堀内秀明氏 ガートナー リサーチ バイスプレジデントの堀内秀明氏

 ガートナーでは、高度な洞察や意思決定を行うために、コスト効果が高い革新的な情報処理プロセスを必要とする、大量、高速、多様な情報資産のことをビッグデータと定義している。さまざまな技術の登場によって、ユーザーのデータ分析に対する関心は高まっているものの、「よし、うちの会社でもやってみようというほど簡単なものではない」と堀内氏は指摘する。同社では、2015年までにFortune 500のうち85%以上の企業が競合優位性確保に向けてビッグデータを効果的に活用しようとするが失敗すると予測する。ただし、悲観するのではなく「残りの15%の企業にどうやってなるかが重要だ」と堀内氏は述べる。

 では、どうすべきだろうか。データそのものはあくまで素材に過ぎず、単にデータを使うだけで良質なインテリジェンスが得られるわけではない。大量のデータに対して検索処理や集計処理といった技術を施すことにより、一定の意味を持つ情報となる。この情報をインテリジェンスにするためには「意思決定者のニーズに合致し、重要な意思決定に貢献しなければならない」と堀内氏は解説する。

 データをインテリジェンスにつなげるために、企業は具体的に何に取り組めば良いのか。堀内氏によると、外部人材の活用が鍵を握るという。ガートナーの調査によると、企業がビジネス・インテリジェンス(BI)に関する取り組みを成功させる上で重要な役割を担うのは、自社のユーザー部門が回答全体の37%と最も多く、自社IT部門(31%)、自社経営陣(26%)と続いた。一方で、BIが成功する上で関連しないのは、外部コンサルタントが49%で1位、ソフトウェアベンダーが39%、システムインテグレーターが23%と、外部パートナーが上位を占めた。

「BIを成功させるためには、ユーザー企業自身がしっかりと取り組むのはもちろんだが、外部の力が不要というわけでもない」(堀内氏)

 外部の人材を必要とする具体的な例が、データ解析や情報活用を専門とするデータサイエンティストだ。データサイエンティストに求められるスキルや経験について、堀内氏は、データ内部の関係を発見し、考えられるパターンを提示する「分析・意思決定モデリングスキル」、分析に使用する関連データセットを構成する「データ管理スキル」、ビジネス部門の利害関係者と共同作業を行い、ビジネス上の問題とコンテキストを理解する「ビジネス部門とのコラボレーション能力」の3つを挙げる。「こうしたスキルを持つ人材を自社で育成するのは難しい。短期的には外部の専門家の力を借りることも検討すべきである」と堀内氏は提案する。

 例えば、カブドットコム証券が行ったソーシャルメディア分析の実証実験において、外部パートナーの力が大いに役立ったとしている。同社では、2011年7月から11月の期間で、1日当たり約900万行のソーシャルメディア上の情報を収集し、約4万3000のキーワードに絞り込み、それらの相関分析によって銘柄に関連する記述が掲載されているかどうかを検証した。

 これを実施するにあたり、社内でシステムを構築する選択肢もあったが、データ解析に関する専門要員を新たに育成するよりも、外部(日本IBM)に委託する方が効率的かつ高品質な成果が出ると考えた。実験は成功し、今後、ソーシャルメディア上の情報と株価変動との関連性を調べ、サービスとして提供できるよう開発を進める予定だという。

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