ビッグデータに溺れずビジネスにつなげる“極意” SAS首脳陣が提唱

企業が抱える大量のデータから価値ある情報をどう手にするか――。米SAS Instituteの首脳陣が来日し、ビッグデータ時代に求められる情報活用のための道筋を示した。

» 2012年07月13日 20時45分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 SAS Institute Japanは7月13日、ユーザー企業の経営層を対象としたカンファレンスを都内で開催した。米SAS Institute 共同創設者兼CEOのジム・グッドナイト氏ら同社首脳陣が来日し、ビッグデータ(多種・大量のデータ)時代に求められるデータ分析や企業経営につながる情報活用のあり方を説明した。

 ここ数年、企業で蓄積されてきたビッグデータをいかに活用するかというソリューションが脚光を浴びつつある。膨大な量のデータを分析し、業績向上などにつながる情報や知見を得るというのが目的である。

 SAS Institute Japanの吉田仁志代表取締役社長は、データ分析をめぐる実情について「ひと頃のビジネスインテリジェンス(BI)の流行が一巡したものの、何も変わっていない。改めて“分析”が課題になっている」と指摘する。多くの企業がデータの分析にとどまってその先に進めていない。「データに意味を持たせなければ価値はない。それもタイムリーに情報に変えて将来を見越す洞察力にしていく。そうでなければ、ビッグデータは価値が無いものになる」と述べた。

SASユーザー企業におけるビジネス分析効果の一例

 ヨーロッパ・中東・アフリカ地域・アジア太平洋地域担当ゼネラルマネジャーのシェイカー・アイヤー氏は、現代の状況がインターネット普及の進んだ1990年代に酷似していると話す。インターネットサービスの登場で社会が劇的に変化したように、現代はスマートフォンに代表されるモバイルデバイスやソーシャルメディア、クラウドコンピューティングの台頭で膨大な量のビッグデータが日々生成されつつある。これを価値ある情報として活用していけるかが、“勝ち組”企業となるための鍵になるという。

 データ分析と情報活用という点ではBIの必要性が長らく叫ばれてきた。しかし、上級副社長兼最高マーケティング責任者のジム・デービス氏は、BIではなくビジネスアナリティクス(BA)が重要だと語る。

 「データから情報を得るだけではない。顧客を深く理解し、顧客の要求に確実かつタイムリーにどう応えていくかをデータから導き出すのがBAだ。レスポンスが要求される現代は、データ分析に何時間もかけているわけにはいかず、秒単位で対応していかなければならない」(デービス氏)

 ビッグデータという言葉の定義はまだ明確にはなっていないが、デービス氏は「従来のデータベースに入りきらないほどのデータ」とした。構造化や非構造化といった形式ではなく、その全てに価値を含む重要な情報資産と捉えるべきだという。

ビッグデータ活用のインフラが整う

 ビッグデータからタイムリーに価値ある情報を引き出すことを、同社では「ハイパフォーマンスアナリティクス」と呼んでいる。だが、従来のようにデータからサンプルを抽出してモデリングし、時間をかけてその検証を繰り返すという手法ではハイパフォーマンスアナリティクスを実現できない。

 このため同社は、ハイパフォーマンスアナリティクスを可能にする技術やソリューションを開発、5月にSAS LASR Analytic ServerやSAS Visual Analyticsとして国内でも発表した。ハイパフォーマンスアナリティクスを可能にしたのは、コンピュータ性能の劇的な進化とコストダウン。

Sandy Bridgeを手にするジム・グッドナイトCEO

 グッドナイト氏は、「3年ほど前にシンガポールの金融機関からリスク分析に要する時間を短縮してほしいという要望を聞いた。社内の技術開発陣に掛け合い、演算時間を18時間から16分に短縮できる分散処理演算によるソリューションを開発した。その秘密がIntelプロセッサのSandy Bridgeだ」と語る。

 SAS LASR Analytic Serverは、最大48台のブレードサーバを用いてビッグデータの分析処理を可能にする。「私の好みは48台のブレードだ。一般的な企業が持つ6テラバイトものデータのほぼ全てをメモリ上に展開できてしまう」(グッドナイト氏)

 さらに、SAS Visual Analyticsではユーザーが各種の指標やデータをPCのディスプレイ上でドラッグ&ドロップするだけで、瞬時にグラフィカルレポートを作成する。高いハードウェア性能を持つ基盤と、直観的な操作ができるユーザーインタフェースを利用すれば、伝統的なデータ分析をすることなく、ユーザーが瞬時に必要な情報を得ることができ、迅速な意思決定につなげていけるという。

SAS Visual AnalyticsはiPadでも利用でき、意思決定に生かす情報をいつでもどこでも手に入れられるという

 最後にヨーロッパ・中東・アフリカ地域・アジア太平洋地域担当上級副社長のミカエル・ハグストローム氏は、企業を成功に導く原動力はデータであり、限られたリソースで膨大かつ複雑なデータから価値ある情報を引き出していくことが不可欠だと締めくくった。

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