「ネチケット」を賢く学べ! その3 ウイルス対策“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話(1/2 ページ)

驚くべきことに、ウイルス対策ソフトを利用していない人がいる。騒動の真っただ中にある事件からも、その危険性を知ることができるだろう。ウイルス対策がなぜ必要なのかをお伝えしたい。

» 2012年10月19日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 今回も「自分を守り、他人に迷惑をかけないネチケット」を取り上げたい。第3弾は「ウイルス対策」である。

ウイルス対策ソフトは必須ですが……

 筆者は、数年前まで某銀行のシステム部に在席していた。そこで体験したことの一つに、「ネットバンキング利用者の中にウイルス対策ソフトを使っていない人が少なからずいた」という事実がある。これには本当に驚いた。例えるなら「通帳とキャッシュカード、暗証番号の3点セットを路上に置いている」ようなものだ。こうした利用者は、いつ盗まれてもおかしくないという状況を理解していない。全国銀行協会や金融庁が最も基本的な「啓蒙活動」として真剣に行ってほしいと思う。

 また、数年前にある実験を主要プロバイダーとテレコム・アイザック推進会議、JPCERT コーディネーションセンターと共同で行った。その中で「セキュリティ対策をしていないPCがどのくらいの時間でウイルスやマルウェアなどに遭遇してしまうのか」というのがあった。

なんと、「平均4分」である。

 その当時の講演活動でこの事実を紹介したが、素人だけでなく銀行員に伝えても「ピンと来ていない」人が多くいて、ますます驚いたものだった。上述の例えに加えて、こうも話した。

 「あなたの息子さんが中学生になったので、PCを誕生日にプレゼントをしたとします。目の前で見ていてください。息子さんはある程度の操作は知っています。だから、まず箱を開いてPCの電源を入れてインターネットに接続しようとするでしょう。だいたいの家庭には無線LANのアクセスポイントがあります。無線LANで暗号化を利用していない家庭が多いのです。昔と違って、息子さんはWebブラウザさえ動かせばすぐにインターネットへ接続してしまうでしょう」

 以前は暗号化の設定が難しいものだったが、今では「Wi-Fi Protected Setup」機能があり、ボタン操作1つで簡単に設定し、すぐにインターネットが使えるようになっているものが多い。だから、暗号化されているかどうかも分からないまま利用している家庭が多い。そのうえ、住宅密集地やマンションなら自宅で暗号化していても、近隣が暗号化されていないアクセスポイントにつながってしまう例すらあった。筆者の自宅は密集地ではなく、四方も最低で4メートルは離れている。それでもアクセスポイントが5カ所も見つかる。今はそういう時代なのだ。

 そんな環境で無防備なPCをインターネットに接続すれば、4分も経過するとボットなどの不正プログラムに遭遇する機会があり得るというわけである(やや乱暴な表現だが)。よって、購入したばかりのPCでまず行うことは、無料でも有料でも構わないので、まず「ウイルス対策ソフト」をインストールし、最新のパターンファイルに更新する。それから、ネットサーフィンを楽しんでほしい。

 また、ウイルス対策ソフトの特徴は製品でそれぞれに違う。企業が導入する場合、環境に応じてウイルス対策ソフトも変更すべきだとも伝えてきた。だが、製品選定では資本関係とか取引先関係などが影響して決まる例も多く、しかも、企業内部のシステムでウイルス対策ソフトの種類が違うと運用が面倒だという観点もあり、そこまで徹底している企業はほとんど無い。

 マルウェアの中には、感染後に自分自身を消去したりソースコードを変化させたりするタイプもある。発見が困難になるのだ。そして、最もやっかいなことは、感染したコンピュータのユーザーが「被害者」であると同時に「加害者」にもなってしまうのだ。感染した瞬間に「ネチケット」どころか犯罪者の片棒を担ぐことになりかねないのである。

 マルウェアに感染したPCは、もはや自分のPCではない。感染攻撃をした犯罪者の指示で自由に操られてしまうPC(通称:ボット)となる。しかし、ユーザーはまず気が付かない。犯罪者はこうしたPCを自ら操作したり、第三者に有償で貸し出したりする。スパムメールを送信したり、DDoS攻撃を官公庁や企業に対して仕掛けたりといった、さまざまな悪事を行うのだ。専門機関の調査でこのようなPCは、国内に少なくとも50万台が存在するとされる。統計的にみれば、恐らく100万台近くが既に存在しているだろう。IPアドレスから企業内のPCとみられるケースも少なからずある。

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