「コミケの文化を世界に」――Windows Azureで動く「コミケWebカタログ」開発の舞台裏(2/3 ページ)

» 2012年12月20日 17時07分 公開
[本宮学,ITmedia]

“トラフィック爆発”に備えてクラウドを採用

 Webカタログの開発に当たっては、日本マイクロソフトのクラウドサービス「Windows Azure Platform」を基盤に採用した。コミケ開催中の3日間は1日当たり20〜30万アクセスが見込まれるため、トラフィックの増減に応じてサーバリソースを柔軟に変えられるクラウドサービスを採用するのは必然だったという。

 「同人イベントのWebサイトは、サークル申し込み期間の最後の数日間だけアクセスが殺到したりと、タイミングによってアクセス数の増減が激しい」と堀口さん。同社はコミケ以外の同人イベントでも申し込みサイトを運営しているが、サークルの抽選結果が分かる瞬間などは「アクセス過多でつながりにくくなることもあった」という。

 こうした特性に対処するため、2011年にWindows Azureを導入。まずコミケ以外の同人イベントの参加申し込みサイトや、コミケ応募者向けの「当落システム」の基盤に採用していった。今回のWebカタログも、クラウドでなければ実現は難しかったと佐藤社長は振り返る。

photo コミケWebカタログのシステム構成

 Webカタログは、Windows Azure上に仮想サーバ2台とSQLデータベースを構築して運用している。実際の開発では「これまで当社内のサーバ環境で運用していたASP.NETがそのまま利用できたので苦はなかった」と田邊さん。だが、公開直後には問題に直面したという。

 11月2日の公開当日、Webサーバのインスタンスを通常時の3倍に増やして臨んだものの「一気に十数万人のアクセスが押し寄せ、SQLサーバが負荷に耐えきれなくなってしまった」と田邊さん。当時は一時的にサイトの機能を減らすことで対処し、その後チューニングを繰り返すことで根本的な解決を図っていったという。今後は「公開日と同じレベルのアクセスが来てももう大丈夫」と佐藤社長は自信をみせる。

運用コストは広告でカバー、収益は「追いすぎない」

 コミケ当日は人の密集率が高く、会場からは携帯電話やスマートフォンでネットにアクセスしにくくなることが予測される。「当日は、家でWebカタログを見て最新情報をチェックしてからコミケに向かうといった使い方をしてもらえれば」と佐藤社長は話す。

 Webカタログの収益源はサイト内のバナー広告だ。Windows Azureはアクセス量などに応じた従量課金制だが「アクセス数が増えれば増えるほど広告収入が増える仕組み。サイトの運用コストは広告だけでもカバーできる」という。

 今回のWebカタログは無料のβ版という位置付けで、次回の夏コミで提供する正式版ではユーザー課金も検討している。例えば無料版と有料版で使える機能を分けたり、スマートフォンやタブレット端末向けにアプリを有料で提供し、電波が通じにくい状況でも見られるようにする――など、複数の課金方法を検討しているという。

 こうして得られる収益の一部はコミックマーケット準備会に還元したり、紙版やWeb版の制作費に充てるなど、参加者の利益につながる仕組みにしていく考えだ。「コミケは開催に必要な資金があればOKというスタンス。当社としても、収益を追いすぎないコミケの特性にならってやっていきたいと考えている」(佐藤社長)

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