2012年もあと1週間。IT関連の調査会社が相次いで2013年のIT市場のトレンド予測を発表しているのでまとめてみた。
IT関連の調査会社が年末恒例の新年のITトレンド予測をそれぞれ発表しているので、ピックアップしてみた。
まず、米Gartnerが発表した「Gartner Predicts 2013」については、本コラム連載の「Gartnerの予言」(11月19日掲載)でポイントをまとめているので参照いただきたい。
また、IDC Japanが発表した2013年の国内IT市場および世界IT市場の予測については、「2013年にIT市場はどう変わる?IDC Japanが10の予言」(12月13日掲載)および「IDC Japanが予測する2013年の世界のIT市場動向」(12月3日掲載)で紹介しているので、下記の関連記事を参照いただきたい。
さらに、ここでは米Forresterが先頃発表した「2013 Cloud Predictions」(原文英語)について紹介しておきたい。このレポートでは、2013年の世界のクラウド市場について10項目の動向を予測している。それぞれ筆者の解釈も添えておく。
(1)すべてクラウド化する必要はないという考え方が定着する
多くの企業が自らのICT環境のクラウド化を実施・検討しているが、2013年はその流れに少々揺り戻しがあるとの見方だ。アプリケーションによって、クラウドに限らず従来の仮想化インフラやホスティング環境を選択する動きも出てくるとしている。
(2)クラウドとモバイルが一体化する
モバイルアプリケーションのバックエンドシステムは、クラウドが前提になるとの見方だ。また、クラウドとモバイルの組み合わせは、1+1=2以上の効果を生み出すとしている。
(3)クラウドのSLA(サービス品質保証)に対する見方が変わる
クラウド上でアプリケーションを構築・実行する際は、クラウドプラットフォームのSLAだけでなく、アプリケーションを柔軟に利用できる環境かどうかも注目されるようになるとの見方だ。
(4)クラウドサービスのコスト構造のモデル化が進む
クラウドサービスは少ない初期投資も含めて廉価だというイメージがあるが、投資効果を明確にするためにはコスト構造のモデル化を図る必要がある。2013年はそうした作業が進むとの見方だ。
(5)エンタープライズアプリケーションの開発にパブリッククラウドが利用されるようになる
これまで保守的だったICT部門が、エンタープライズアプリケーションの開発にパブリッククラウドを利用するようになるとの見方だ。
(6)バックアップやディザスタリカバリでのクラウド利用が加速する
バックアップやディザスタリカバリにはクラウドを利用したほうが、安価で利便性が高いことから、この動きは一段と加速するとの見方だ。とりわけディザスタリカバリでは、コスト面で効果が大きいとしている。
(7)廉価だけでなくハイエンド向けのクラウドサービスも登場する
クラウドサービスは廉価なイメージがあるが、2013年には高性能サーバなどを利用できるハイエンドなクラウドサービスも続々と出てくるとしている。
(8)7割のシェアを持つAWSが苦戦を強いられるようになる
現在、クラウドプラットフォームサービス市場でおよそ7割のシェアを持つとみられるAmazon Web Services(AWS)だが、2013年はこの分野を急速に強化してきているMicrosoftやGoogleとの競合が激しくなり、苦戦を強いられるようになるとしている。
(9)仮想化イコールクラウドではないとの理解が深まる
現状では、とりわけ仮想化環境とプライベートクラウドについて明確な線引きがなされていない面もあるが、2013年にはこれが明確になってくるとの見方だ。
(10)従来の開発手法がクラウド上でも適用できるという理解が開発者の間で深まる
今やクラウド上ではこれまでエンタープライズ環境で使われてきた言語や開発手法の大半が利用できるようになってきており、2013年はこれが開発者に浸透してクラウド上で生産性を上げるようになるとの見方だ。
Forresterの予測を見て筆者が注目したのは、企業システムのクラウド化に揺り戻しが来るとした第1項目である。企業がクラウド化に対して少し冷静に対処するようになるとの見方だと解釈できるが、この予測を第1項目に挙げたところに意味があると感じた。
最後に、同じ「揺り戻し」をキーワードに筆者も2013年のITトレンド予測を1つ挙げるならば、ソーシャルサービスブームの揺り戻しがあるのではないかと。普及著しいソーシャルサービスはさまざまな効果を生んでいるが、一方で懸念される出来事もいろいろと起こり始めている。
それは、ソーシャルサービスも人間社会のリアルなコミュニケーションなので当然のことである。だが、こうした新しいコミュニケーションスタイルがそれなりのバランスに落ち着くには、幾度かの揺り戻しがある中で社会自体が学習していくしかないと考える。
つまり、ソーシャルサービスの成熟へ向けた第一歩が2013年、というのが筆者の見立てである。こう書いて、これは予測でも何でもないことに気づいた。ご容赦いただきたい。ということで、2013年のソーシャルサービスの動向については、これまでにも増して注視していきたい。
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