IDC Japanは、2013年の国内IT市場のトレンドやベンダーの動向などについて10項目を予測し、同社の見解をまとめたレポートを発表した。
IT調査会社のIDC Japanは12月13日、2013年の国内IT市場に関する予測を発表した。ITサービス市場とソフトウェア市場は2〜4%程度の成長を維持するものの、外需の低迷によって国内景気が減速。景気に敏感なハードウェア市場が約2%のマイナスとなり、IT市場全体では前年比0.5%増の13兆6000億円規模になると見込んでいる。
また同社は、2013年にキーとなる技術や市場トレンド、ベンダーの動向などを10項目のレポートにまとめている。その概要は次の通りだ。
同社は「モビリティ」「クラウド」「ソーシャルネットワーク」「ビッグデータアナリティクス」の4分野を、今後20〜30年にわたって企業の成長を支える「第3のITプラットフォーム」と定義している。2013年にはこれら4市場がそれぞれ2桁台の成長を遂げ、特にクラウド、ビッグデータ、ソーシャルの3市場では前年比成長率が40%を超えると見込む。
モビリティの分野では、スマートフォンやタブレット、電子書籍を含むスマートデバイス市場が前年比10%増となり、IT市場全体に占める割合が約14%まで拡大するという。一方、国内PC市場については前年比9%のマイナスになるとみる。
法人ではBYOD(個人所有端末の業務利用)が加速するという。IDC Japanの中村智明リサーチバイスプレジデントによると「既に約3割の企業がスマートフォンのBYODを行っており、2割の企業がタブレット端末のBYODを行っていることが分かっている」という。
だが、2013年はBYODのセキュリティリスクも顕在化すると中村氏は指摘する。「BYODを実施している企業のうち約3割は、私物端末の業務利用を“黙認”している」(中村氏)。このようにモバイル端末管理(MDM)ソフトなどを導入していない“野放し”のスマートデバイスが、第三者による社内システムへのなりすましアクセスや情報漏えいといった事故を引き起こすという。
「事故が発生するのは避けられない。一度事故が起きると多くのメディアなどに取り上げられて注目を浴びるため、これまでBYODを黙認していた企業もセキュリティ対策を意識せざるを得なくなる」(中村氏)。これを受け、モバイルセキュリティ市場は2011〜2016年に年率23%で拡大すると予測している。
クラウドの分野では、事業者のデータセンター内にプライベートクラウド環境を構築する「ホステッドプライベートクラウド」の利用が拡大するとみる。また、ビッグデータ分析を中心とした特定業種向けのPaaS(Platform as a Service)にも注目が集まると見込んでいる。
ソーシャルの分野では、企業内コラボレーションツール市場が前年比51.9%で成長するとみる。一方、コンタクトセンターや人材サービス事業者、O2Oマーケティングを展開する事業者などでは、社外向けに情報を発信するためのソーシャルサービスの利用が必須になっていくという。
中村氏は2013年のIT市場トレンドを「新しいタイプの企業向けサービスが出てくるというより、既存のサービスが活用されるようになる」と総括する。例えば、2012年に実験的な利用が進んだSDN(Software Defined Network)が実用段階に入るほか、企業向けのモバイルセキュリティサービスや、セキュリティに配慮したクラウドサービスなどが多数登場して注目を集めると予測している。
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