金融取引システムの“常識”に新風 SBIリクイディティ・マーケット(1/2 ページ)

FX取引において発生する1秒あたり数万のトランザクションを十分に処理できるシステム基盤を支えるデータベースエンジンとして導入されたものとは――。

» 2013年01月23日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 SBIホールディングスのグループ会社として2008年7月に設立されたSBIリクイディティ・マーケット。同社は、SBI証券、住信SBIネット銀行、SBI FXトレードという金融商品取引業者等に外国為替証拠金取引(FX取引)に関する市場機能およびサービスの提供と、それらに附随するシステム開発や商品開発をメインに事業展開している。

 FX取引は1998年4月の改正外為法施行後に日本でも誕生し、その後、個人投資家の需要の高まりを受けて急速に市場が拡大している。そうした中にあって、24時間365日止まることのない、強固かつ安全性の高い取引システム基盤が求められているのは容易に想像できるだろう。このような市場要請に対し、SBIリクイディティ・マーケットでは、1秒あたり4万ものトランザクションを十分に処理できる高パフォーマンスでミッションクリティカルなシステムを構築している。

SQL Serverでのシステム構築は先行事例がなかった

SBIリクイディティ・マーケットの重光達雄社長 SBIリクイディティ・マーケットの重光達雄社長

 創業以来、そのシステム基盤の中核となっているテクノロジーが、マイクロソフトのサーバ製品「Microsoft Windows Server」と、リレーショナルデータベース管理システム「Microsoft SQL Server」、アプリケーション開発では「.NET Framework」である。金融サービスのようにミッションクリティカルなシステムが必要とされる場合、データベースに「Oracle Database」や「IBM DB2」を利用することが多いが、SBIリクイディティ・マーケットはSQL Serverを選択した。それはなぜだろうか。同社の重光達雄社長は、その最大の理由を以下のとおり述べている。

 「競合他社の取引システムは多大なコストをかけて、無駄ともいえるほど大規模な構成で作り上げていた。当社は、この初期システム投資を効率化し、他社に比べてコストをどう抑えられるかを重視した。こうしてコストの低減を図ることにより、有利なスプレッドの提供をはじめ、競争力の高いサービスを実現できるようになった」(重光氏)

 加えて、マイクロソフトに対する「信頼性」や「柔軟性」にも注目した。信頼性については、SBIリクイディティ・マーケット独自が抱える外部インスペクション機関で客観的に高い評価と動作保証がなされていたこと、柔軟性に関しては、スケールに合わせたシステム設計や、機能追加や法規制などの設計変更など、繰り返しの追加要件による構成変更へも柔軟に対応できるフレームワークであることが決め手になったという。

 また、重光氏は、改正外為法施行から間もないころ、今とは違った形ながらSBIグループにおけるFX事業にかかわっており、当時からマイクロソフト製品を導入していたという経緯がある。ただし、「当時はSQL Serverで金融システムやFX取引システムを構築したという先行事例がなく、大規模な証券会社に提供するインフラやマーケットシステムをSQL Serverで支えることができるのかという声もあった」と重光氏は振り返る。

 そうした中、同システムを精度の高い金融取引プラットフォームとするために、たび重なるチューニング作業を行い、とりわけパフォーマンスの向上に努めた。

 「ハードウェア、アプリケーション、ネットワークなどが最高のバランスになるように、日々チャレンジを続け、システムに改良を加えていった。まさにF1マシンを作り上げるような取り組みだった」(重光氏)

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