シェフに売り込むビッグデータ分析? IT部門以外にビジネス機会が広がるIBM PartnerWorld Leadership Conference 2013 Report(2/3 ページ)

» 2013年02月28日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
Cheesecake Factoryのシェフ、ドナルド・ムーア氏

 ディレオ氏がオープニングセッションのステージに招き上げたのは、彼の家族もお気に入りというレストランチェーン、Cheesecake Factoryだ。戦後、まだ間もないころ、創業者夫婦がデトロイトに手作りのチーズケーキ屋を開いたのが始まりというCheesecake Factoryは、今や全米に175店舗を展開し、200のメニューで年間延べ8000万人ものお客をもてなしている。

 「われわれは食のパイオニアになりたい」と話すのは、同レストランチェーンの厨房を統括するChief “Culinary” Officerのドナルド・ムーア氏だ。いろいろなCxOが米国企業にはいると聞いているが、「Culinary」とは初耳だ。「PartnerWorldのオープニングでCheesecake Factoryのシェフに話を聞くなんて、少し前まで想像もつかなかった」とディレオ氏も楽しそうに笑う。

 「最高の食材を使って家庭では味わえない料理を提供したい。ハンバーガーであっても新鮮でジューシーな牛肉を調理する」とムーア氏が話すように、Cheesecake Factoryはほかのチェーン店にありがちな加工済みの料理を温めたりするのではなく、各店舗の厨房で素材から調理しており、そうしたこだわりがファンにも支持されている。

 全米の175店舗とライセンスによる中東の3店舗すべてで食材の新鮮さと料理のクオリティーを維持するため、同レストランは世界規模のサプライチェーンから日々生み出されているビッグデータに着目した。適温で鮮度が維持されている食材の輸送データや食材の貯蔵寿命データなど多岐にわたるビッグデータを分析し、食材の鮮度を管理できれば、料理のクオリティーは高められるし、ムーア氏は「何より飲食業で最も大切な食の安全に注意を払える」と話す。

 また、顧客の満足度を高めるため、注文から提供までの時間をできるだけ短くすることも課題だ。各店舗の厨房で素材から調理するため、だれが、いつ、どの調理を行うか、一層の工夫が必要になる。

顧客のビジネスを理解するパートナーの出番

 ムーア氏は、食品流通に精通したフロリダ州ロングウッドのN2N GlobalをITパートナーに選び、IBMのPower System、Cognos、DB2などを導入、アナリティクスによって、Cheesecake Factoryのクオリティーを満たせない食材の使用を迅速に止めたり、調理指示の最適化で時間を節約できたりしている。

 全米レストラン協会によれば、100万軒はあるとみられている米国レストラン業界の年間売り上げは6600億ドルに上り、一部のレストランは顧客に素晴らしい体験を提供するため、ビッグデータの分析に取り組み始めているという。しかし、ご存じのようにレストランの大半は経営規模が小さい。業界の専門性はもちろん必要になるし、ITに縁遠いオーナーやシェフが相手となれば、ますますパートナーの出番だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ