「ウルトラワーク」は勝ち残るための企業戦略サイボウズ流の働き方(2/3 ページ)

» 2013年03月12日 08時00分 公開
[野水克也,サイボウズ]

サイボウズの人事制度

 実際、サイボウズの新卒採用や若年層の中途採用では、多様な人事制度に惹かれてやってくる優秀な人材が数多くいますし、一度会社を辞めて、数年して戻ってくる社員もかなりの数に上ります。会社側からすると、普通なら来てもらえないような優れたスキルを持つ人材の採用を見込めるほか、長く働いてもらうことによって教育コストの削減にもなります。

 つまりサイボウズの場合は、企業の競争力を上げるために、多様な人材に対して多様な成長の機会と長く働ける環境を準備しているというわけです。

 そのために必要なのが、次の3つです。

  1. 多様な価値観を認める人事評価制度
  2. 多様な働き方を支援する勤務制度
  3. 多様な価値観と多様な勤務形態でチームワークを発揮できるコラボレーション環境

 ぶっちゃけていうと、「給与が上がる評価の仕組み」を変え、「自由な勤務形態」を認め、「それでも仕事が回る制度やツール」を整備することにあります。

 まず、人事制度です。サイボウズでは「DS」と「PS」という、大きく2つの選択型人事制度を採用しています。

 大企業によくある選択型人事制度は、総合職では転勤自在、業務内容も制限なしで、その代わりに給与の上がり方が一般職より大きいというものでしょう。

 サイボウズのDSとPSの場合は、時間にかんして、DS(ライフ重視)では時間に制限があることを会社と本人が了解したうえで働き、PS(仕事重視)ではその制限が掛かりません。一般的な総合職や一般職と大きく違うのは、いつでも、双方へ変更できるという点です。

 大企業の場合、新卒での入社時に一般職を選択すると、総合職への転換は相当に難しくなります。サイボウズの選択型人事制度の場合は、いつでも好きな方へ転換することができます。これは一生働き続ける中で、「仕事に向き合うスタイルは変化する」という考えに基づいています。

 例えば、新卒で入社した場合、可能性を広げるために数年間はがむしゃらに働く。しかし、そのうち結婚して子どもができると一時的に仕事へのコミットメントを低くして子育てを重視したい場合も出てくるでしょう。また、伴侶の都合で自分の仕事に一時的な制限が生じたり、年齢を重ねれば自分自身の体調や親の介護などのために、コミットメントが低くなったりする場合もあります。

 その時々の状況に合わせて評価軸を選択することで、長く働き続けられて、かつ、その時点で最大のパフォーマンスを発揮できるという制度にしているのが特徴です。入社時に幹部社員を選別して、その区分が定年までついて回るキャリア制度ではありません。

 また、この制度は単に家庭環境による時間や場所の制限でDSを選択するという使い道のほかに、趣味や違うキャリアの追求のために、会社との時間配分を変えることにも使えます。そして、現在の仕事以外でのスキルや才能を生かす取り組みを社外で行った結果、多様な人材育成を図れるケースもそのうちに出てくると期待できます。

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